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アカノクロノ  作者: ばてぃ〜
ⅩⅧ章【ボクトアナタトワタシトキミト】
622/640

クロノとアカノの別れ


「さぁ、これで準備は整ったよ。」


()は鷹揚にそう呟きながら安堵する

非常に変則的なやり方だったが上手くいった

【嫉妬タル心ノ臓】は相手の姿形だけでなく、能力や装備品をも完全に模写する事が出来る

そんな能力だからこそ私はフロウになり、フロウが元々持つ【嫉妬タル心ノ臓】を再度発動させ、私に変化した


「・・・蟲が小蟲になり・・・羽蟲になるんかえ?」


だがそれを見ていた【神】は私が私になった事に納得できないらしい

まぁ、彼女からすれば元【真祖】とは言え、全盛期の半分程度しかない私は雑魚以下の存在だと認識しても何ら変な事ではない


「おいおい・・・聞いてなかったのかい?私はね、今から君と戦う場所を変えようとしているんだよ。」


「・・・・・・そんな羽蟲になり、何が出来るんえ?」


【神】とは何処までいっても傲慢なんだねぇという月並みな感想しか浮かばない

彼女の言を無視して、私は胸元から1つの道具を取り出す


「・・・なんえ?」


彼女が疑問を呈する間も与えずに足元に魔法陣を展開させる

そして私も魔法陣の中へ侵入していく


「さぁ、これで私たち2人きりの場所へ移動するよ。そこは、時間も緩やかで誰も住んでいない様な異界の地だ。・・・きっと君も気に入るだろうね。」


私がそう告げた瞬間、魔法陣は起動していく

あと数秒程度で私たちは誰も入ることが出来ないあの場所へ転移されるという訳だ


「クロノっっっ!!!」


転移を始める私に向かって、アカノ君はクロノ君の名を泣きそうな表情で呼び叫ぶ

私はクロノ君ではあるがクロノ君ではない

何かを言ってあげるべきだと思うが、生憎時間は残されていない

そうだな・・・


「姉さん、元気でね。・・・僕は姉さんを許すよ。」


「っっっ?!!!!!」


多分、クロノ君ならばこうは言わなかっただろう

いや・・・本音としては言いたかっただろうが言えなかったのだろう

だからこそクロノ君ではない私が、君の代わりに言いたかった事を言ってあげよう


1人は言いたくて言いたくて仕方なかった言葉を・・・

1人は効きたくて聞きたくて仕方なかった言葉を・・・


この小さな世界の小さな国で小さな姉弟の仲を取り持つくらいは別に良いだろう?

そう自己完結した瞬間、アカノ君の返答も聞こえぬ間に私はあの場所へ【神】と共に転移した・・・



「ク・・・ロ・・・ノ・・・?」


今まで其処に居た筈のクロノは、私の目の前から瞬時に消えた


「クロ・・・ノ・・・」


私と戦い、私を追い詰め、私を救ったであろう・・・最愛の人が居ない


「・・・・・・クロ・・・」


【真祖】様の姿ながら最後に私を許すと言った言葉

その意味は詰まる所、()()()()()()なのだろう・・・


「あ・・・あぁ・・・」


もう、二度と・・・私と逢わない・・・

だからこそ最早許すも許さぬもどうでもいい・・・


「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!!!」


それは最早絶望・・・

愛する人に愛される事も無く、嫌われることも無く・・・

無関心という言葉すらも明確に合致しているかも怪しい・・・


二度と逢わないからこそどうでも良い

生きようが死のうが、許すからこそどうでも良いと思われる


そんな最後の瞬間が()()だったなんて・・・


「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


【神】が居なくなったなのか、それとも【神】により耐久に限界がきたのか・・・

古城はガラガラと音を立てて徐々に崩れていく

けれど・・・


「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


私は今流れるこの涙をぬぐい、一目散に古城を去るという気力がどうしても湧かない

耳に流れて来る音は、古城が崩れていく崩壊の音色と、私の叫び声である懺悔の慟哭のみだった・・・


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