クロノの奮起と分離
【暴喰神】の回答を聞く前に断られるであろう事は容易に想像できた
というよりも、断ってくる一択だろう・・・
「妾が蟲の鳴き声で僅かでも啓示を翻す事なんざありゃせんえ。」
「まぁ、僕としても言うだけ言ってみたって気持ちで通るとは思ってないよ。」
実際に負け惜しみではなく、純粋にそう思っていた
この提案はどちらかと言えば時間稼ぎの要因の方が強い
「ほぅ・・・で結局の所、何が狙いえ?」
「そうだなぁ・・・それを言っても良いとは思うんだけど・・・【暴喰神】、君は不思議に思わなかったかい?」
「・・・・・・・・・何?」
「君を降ろした僕が、今も君の前に立っていると言う事実さ。」
「・・・・・・理屈は分からんけども、そういう事もあるやろ?」
「ハハッ・・・流石、【神】だな。」
やっぱりね・・・やっぱり偉い奴ほど足元が疎かになる
どんな事象があっても、理解出来ない事があったとしても・・・そういう事もあるという一言で全てを片付ける
「・・・で、結局の所は何が狙いえ?」
「やれやれ・・・これは僕から君へのサービスだったんだよ。僕がどうやって君と分離できたのかを理解すれば、自ずと僕の狙いも分かった筈なんだよね。」
そう答えながら【暴喰王ノ口】を顕現させる
「これは僕のオリジナルで【暴喰王ノ口】と名付けたスキルだ。」
「・・・名付けた?」
「そう、そして僕の【暴喰王ノ口】は全てとは言えないけれど、ある程度のモノであれば喰う事が出来る。」
「はんっ!結局の所、妾の【廻帰月喰】の下位互換という事かえ?妾の【廻帰月喰】の前では喰えぬモノ等存在せんえ。」
「確かに君の言う通り下位互換ではあるんだろう。でも・・・それでも僕の取っては非常に有用だよ。知ってたかい?僕が君を降ろしても僕自身の意識は薄っすらとあるんだよ。」
「・・・魂が入れ替わる訳でも無いし、消える訳でも無いんやからそうやろうねぇ。」
少しずつ僕のペースへ持っていく事が出来ている
【神】とは何と御しやすいんだろうと内心苦笑してしまう
「君が【剣神】諸共、降ろした人族も喰うと言った瞬間に僕の意識はハッキリとしたんだ。」
「・・・・・・」
「で・・・君と僕を繋げている【暴喰神ノ口】、そのスキルそのものを、ね。」
「っっ?!喰ったいうんかっっ?!!!」
「あぁ・・・ペロリと、ね。」
僕がそう告げた途端、【神】の顔色が変貌する
その表情を見ていると思わず口角が上がってしまう
スキルを喰った・・・それは詰まり、今目の前に居る【神】はスキルで降りてきたにも拘わらず戻る手段が無いという事だ
結論を言うと・・・
「君はもう、この世界から出て行く事は出来ない。」
「わ・・・われぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
僕の言いたいことを理解して狂った様に叫び声を上げる
「さて、僕はまだ本題を言っていないよ?何が言いたいかと言うと、この【暴喰王ノ口】があれば【剣神】と【剣神】を降ろした人族を・・・ね?」
「啓示すら否定するんかっ?!!!こ、ここここここの蟲風情がっ?!!!」
そう言って僕に襲い掛かろうとする仕草をするが・・・もう遅い
僕は顕現させた【暴喰王ノ口】を首だけになった【剣神】に向かわせる
「ひっ!!!」
【神】といえども悲鳴くらいは上げることが出来るらしい・・・
だが、その悲鳴すら虚しく・・・【剣神】は【暴喰王ノ口】に為す術も無く喰われていった
(さぁ・・・此処からが本番だ・・・)
僕はそう自分自身を奮起させた