クロノの交渉と心証
「消え晒せっっ!!!!」
【暴喰神】はそう叫びながら巨大な触手の一本を僕に向かって襲い掛からせる
・・・要は僕程度に総攻撃の様な体を取る事自体が【神】としての矜持に反するんだろう
(有難い)
それは結局、僕と言う存在を舐めているんだろう
【神】として1匹の下界人に対し本気になるのは大人気ない
詰まりは僕は【暴喰神】からすればその程度なのだ
「だからこそ、目的を達成できる可能性があるんだけどね・・・」
たった一本の触手、されど一本の巨大な触手に襲い掛かって来る
成程、【廻帰月喰】等と言う大仰な名を名付けられているだけある
「【暴喰王ノ口】、【暴喰王ノ口】、【暴喰王ノ口】・・・行け。」
3体の【暴喰王ノ口】の口を顕現させて一気に襲い掛からせる
「ホホホホホッ!!愚かっ!!愚かえっ!!妾よりも下位的存在、然も口の部分しか顕現されない様なモンに負ける訳が有りはせぇへんっ!!!」
【暴喰神】は僕のスキルを見下す様な口調でそう叫ぶが・・・
「な、何でやっ?!!複数体とはいえ、何で妾の下僕が喰われとるんえっっ?!!」
目の前で広げられているのは【廻帰月喰】の触手を【暴喰王ノ口】喰う光景だった
如何に【廻帰月喰】の触手とは言え、一本で【暴喰王ノ口】を屠る事は出来なかったみたいだ
ただ・・・この程度では【神】の心を折る事は到底出来ない
「ほなら・・・これならどうえっ?!!」
「【暴喰王ノ口】、【暴喰王ノ口】、【暴喰王ノ口】。」
今度は2本の触手で攻撃を繰り出してきた【神】に対して、僕は【暴喰王ノ口】を更に3体加える
すると先程と同じ様な光景がまた視界に広がっていった
「何故っ?!!何故妾の配下が喰われているえっっ?!!!」
そりゃ【神】の触手は巨大とはいえ2本しかない
それに対し、僕の【暴喰王ノ口】は触手と比べて小さいが小回りが利く
更に触手部分にも口がある為に近づけば全方位から喰らっていくことが出来る
当然、そんな相手が有利になる助言をする訳も無いけど、ね
「ねぇ、そろそろ僕の要望を聞いてくれても良いんじゃないかな?君の言う啓示を全て無かった事にしろと言ってる訳じゃないんだから、さ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「案外その程度ならば良いいかなと思える様な要求かもしれないよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え」
「ん?」
何かを言ったみたいだけれど、【神】らしくもない小さな声で聞き取れなかった
「不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可え不可えっ!!」
かと思えば壊れた様に半狂乱で不可だと言い続けて来る
まぁ、恐らく【神】自身も此処までコケにされるとは思わなかったんだろうが・・・いつまで経っても話が進展しない
「はぁ・・・じゃあ良いや・・・僕が勝手に言うからさ。さっき君が言っていた【剣神】とその媒体を纏めて喰らうという箇所を訂正してほしい。【剣神】を喰らって貰うのは一向にかまわない・・・けれどその媒体だけは残して置いて欲しいんだ。」
【神】の意見を聞く事も無く、淡々と僕はそう告げる
すると半狂乱だった【神】は動きをピタッと停止させる
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・小僧を降ろした下界のモンを見逃すんかえ?」
「そうだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・小僧は存在そのもの事喰ろうてもええんかえ?」
「そこはどっちでも良い。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・啓示を一か所訂正すれば良んやなぁ?」
「その通りだ。」
どうやら冷静になってきたみたいだ
啓示の訂正とは言っても加筆させる訳でもない
削除であれば多少の交渉余地はあるのでは?と予想していたのだが・・・
「であれば当然・・・不可やなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!」
「・・・だよね。」
僕は辟易した表情でそう呟いた。