剣神の傲慢と困難
「【洵禍終刀】」
ーーーースパッーーーー
「ひぃぃぃぃーーーーーーーーーー!!!」
「【洵禍終刀】」
ーーーースパッーーーー
「ひひひひひいぃぃぃぃーーーーーーー!!!」
「【洵禍終刀】」
ーーーースパッーーーー
「ひいぃぃーーーーーーー!!!!」
あれからも我は【洵禍終刀】を発動し続ける
だが、格下のコレは悲鳴を上げるものの、一向にそのツラを晒す事をしない
いい加減、その察しの悪さに怒りがこみ上げてくる
そんな怒りを乗せて、我は再度スキルを発動させる
「【洵禍終刀】」
ーーーースパッーーーー
「いいぃぃぃぃーーーーーーーーーー!!!!」
我が発動したスキルにより側頭部に鮮血が舞い散る
やっとコレが隠していた顔部分に傷をつけることが出来た
流石のコレでも、我にその怯えた表情を晒すだろう
「いいいい・・・いっいっいっいっ!!!」
だが・・・そんな我の予想は半分が当たっており、半分は外れていた
当たっていたのは、遂に我に顔を晒した事
外れていたのは、怯えた顔を晒すのではなく・・・・
「いっいっいっいっ!!!!いつまでその様な児戯で遊んでいるつもりだえ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
怯えた表情では無く・・・これ以上にない愉悦の表情を浮かべていた事だった
格下である筈の【神】は【洵禍終刀】を放たれ続けても嗤って我を見下している
「格下の【神】が妾に傷をつける事は大したもんえ。されどこの程度の傷をつけた程度で調子に乗るのは・・・些か早計だえ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!!」
よくよく見ると【洵禍終刀】により傷ついた筈の部位に傷口が一切見当たらない
傷がついた事実は血痕を見る限り間違いない
にも拘わらず、一切傷口が見当たらない事に動揺する
「そろそろ良いかえ?主は間違いなく、正真正銘の【神】え。されど・・・【神】の中でも下も下、妾と張り合う事自体が烏滸がましいえ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・なにを」
「主は所詮、下界のモノが創り出した道具により奉ろわれる存在の【神】え。下界のモノが存在するだけで存在する【欲】の【神】である妾とは文字通り格が違うえ。」
我が疑問を言い終わる間も無く、目の前のコレは自慢気にそう答える
道具?欲?格?
コレの言う事は何一つ理解出来ない
「妾が何を言おうと、理解したくないモノは理解したくない。正に【神】そのものえ。でもまぁ、流石に児戯にも飽いた。そろそろ幕切れと相成りましょうか。」
コレがそう言った瞬間、先ほどまで我に襲い掛かる事さえしなかった害虫共が一斉にうねり出す
「【洵禍終刀】」
うねり出す害虫共に対し、スキルを発動させる
だが・・・そのうねりを止めるには至らない
「無駄え。」
短くそう言ったソレは何万という害虫を従え、一極に攻撃を繰り出す
害虫共を撫で斬ろうとしたその瞬間、ソレは嘲笑うかの様な表情を浮かべる
「ホンに馬鹿よなぁ・・・【月喰】」
「っっっ?!!!」
ソレがそう言ってスキルを発動させた瞬間、地中から一斉に害虫共が湧き出て来る
【明鏡止水】の発動を解除した訳も無く、唐突に現れたそれ等に思わず仰け反る
「妾は【スキル神】の主とは違うえ?スキルを発動させて満足する訳もありまへん。」
「っっ!!!」
一瞬にも満たない気の迷い・・・・言ってしまえばそれだけだ
だが『それだけ』がアレに致命的な隙を見せてしまった
その隙をアレが見逃すわけも無く、上空からドンッッという衝撃音が響き渡る
「喰えないモノを喰える様にする・・・それは酷く残酷で、美しくも無いかえ?」
ソレがそう呟くと同時に視界は真っ黒となり・・・我は迎撃できているかも理解出来ずに闇に陥った