クロノとアカノの切望と絶望
「私は今、決して【せきえん】に洗脳されている訳じゃない。そんな私でも・・・クロノの許しを得る事が世界よりも大事なんだ。」
「それは駄目だっっ!!!!」
何に対して駄目だと言っているのだろうか・・・?
きっと今から使おうとするスキルの使用の事だろうが・・・発動させた今、私はもう止めることができない
「クロノ済まない・・・こんな姉で。私は・・・お前を・・・本当に愛しているよ。」
そう言ったと同時に、言い切った喜びと・・・もっと早くに言えなかった後悔が同時に私に襲い掛かる
けれどももう・・・すべては遅い・・・
「【鬼剣神死】」
スキルを発動させた瞬間、身体を捕縛した触手が一斉に斬り裂かれる
身体が自由になったと把握したその瞬間、意識を手放す事になった・・・・
◇
◇
「なんだ・・・これは・・・?」
目の前に映る光景に思わずそう呟く・・・
何処から出てきたか分からない数十の剣が一瞬のうちに触手を斬り刻む
そして・・・アカノ=エンドロールだった存在が・・・異形の神に移り変わっていった
「【剣神】・・・」
その姿は・・・神を思わさせる
どんな神か?
何の神か?
そもそも神なのか?
そんな疑問を微塵も感じさせる事のない、【神】
正確に言うのならば【剣神】そのものとなった・・・
「唯一同じところを上げるとすれば・・・ハハッ、髪の色くらいかな?」
見ているだけで震えが出てくる・・・
そりゃ人族がこんなスキルを発動させれば間違いなく死ぬだろう
「・・・・・・・・・・・・・」
ーーーゴォォォォォーーー
「ああぁぁぁぁっぁぁーーーーーー!!!!」
剣刃が僕に襲い掛かり、吹き飛ばされる
辛うじて受け身をとる事ができたが・・・より戦慄する
(今・・・何をした?)
いや何をしたのかは理解している
手に握っていた剣を無造作に・・・本当にただ無造作に振っただけだ
ただそれだけで剣刃が僕に襲い掛かり、僕を吹き飛ばした
「ハハッ・・・これが、【神】か・・・」
いや・・・これはどう考えても勝てない・・・
満身創痍だとかそう言う話じゃない
【真祖】であった彼らよりも圧倒的に目の前の【神】の方が・・・強い
「クロノ様っっ!!」
「旦那様っっ!!!」
不意にルーシャとファーニャの声が聞こえ僕は振り向く
すると・・・僕と同様に満身創痍である彼女たちが僕のほうへ駆けつけ様としていた
「駄目だっっ!!2人とも来るんじゃないっっ!!!」
ーーーゴォォォォォーーー
「「きゃぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!!」」
「ルーシャ、ファーニャっっ!!!!」
先ほどと同様の剣刃が彼女たちに襲い掛かる
そして・・・彼女たちは壁に打ち付けられてしまっていた
「ク・・・ロノ・・・様・・・」
「ルーシャっ!!ファーニャと共に皆を此処から連れ出すんだっっ!!!」
「・・・え?」
「早くっっ!!!相手の目的は僕だっっ!!!君たちが去って行く分には追いかけたりはしないっ!!万が一追いかけたとしても・・・僕が何とかするからっ!!!」
「で、でも「早くっっ!!!時間がないんだ、早くっ!!!!」」
幸いにも【剣神】は未だ僕を追撃する訳でもなく、剣の握りを確かめている
詰まり・・・先ほどの剣刃は攻撃するつもりではなく、ただ剣の握りを確かめていたという事だ
(それであれって・・・ハハッ、逆に笑えてくるな・・・)
「ルーシャンとファスミン・・・早く行こ。」
「っっ?!カラミトルさん、大丈夫なのですかっ?!!」
「うん、クロノンが助けてくれたから少しマシ。それよりも。此処に私たちが居る方が邪魔になっちゃう・・・早く行こ。」
「っっ?!!!・・・・・・・・・分かりました。」
後方でカラミトルの声が聞こえ、避難を促してくれたのは正直ありがたい
とても周りを気にしながら戦う余裕なんて欠片も持ち合わせていないのだから・・・