クロノの贖罪の商材
(アカノ=エンドロールの雰囲気が変わった・・・?)
突然奇声を発したかと思えば、何処かサッパリとした表情を浮かべる彼女に僕は困惑する
その表情は・・・道を違える前に見ていた表情そのもので・・・
何というか・・・胸にこみ上げてくるものを感じる
「クロノ・・・済まなかった。」
そんな僕の心情を知ってか知らずか、不意に彼女から言葉を投げかけられる
そして何よりも、落ち着きつつも心の籠った様な謝罪に対して驚いてしまう
「・・・それは一体何の謝罪なの?」
「・・・全て。そう、全てだ。」
「・・・抽象的だね。」
彼女、アカノ=エンドロールの回答は僕が決して満足できるものではない
それでも真摯に謝罪してきた彼女には昔に失くした筈の感情が少しだけ蘇る
「当然許す事は出来ないけれど、ね。」
彼女は間違えた・・・いや間違え過ぎたと言うべきだろうか
心情としては僅かに許したいという気持ちは・・・ある
けれど僕と彼女の周りが決してそれを許さない
そしてそれ以上に僕が彼女を心の底から許す事は出来ないだろう
「そう、だな・・・そうだろうな。」
僕の回答にビクッとした彼女だが、当然だと言う様に僅かに頷く
その仕草や回答で、あの壊れたかの様な彼女ではないという事が実感できる
だからこそ・・・
「けれど・・・贖罪のチャンスを与えるよ、アカノ=エンドロール。」
そんな彼女だからこそ、僕は彼女にチャンスを与えたい
彼女には沢山のモノを奪われたし傷つけられた
けれど・・・それ以上に彼女に与えられてきていた事もまた事実なのだ
これは僕のエゴで有り、独り善がりな提案なのだろう
それでも僕は正気に戻ったであろう彼女をこれ以上責め立てる事は出来ない
「贖罪のチャンス・・・?」
「あぁ、簡単な事だよ・・・僕と戦い、僕を殺してみろ。そうすれば僕は君を許そう。」
「っっ?!!」
「クロノ様っっ?!!!」
「旦那様っっ?!!!」
僕の提案にアカノ=エンドロールだけではなく、ルーシャやファーニャも驚きの声を上げる
勿論そんな事を想定範囲内だ
僕は彼女たちの反応を意に帰さず、言葉を続ける
「簡単な理屈だよ。君が僕を殺せば僕はこの世にいない・・・そうすれば許しを請う相手も存在しないだろう?」
「そんな訳「更に言うならば魔族領では強いものが正しい・・・君が僕を殺すことが出来れば強者である君の方が正しいんだよ。」
「「・・・・・・」」
僕の言葉にルーシャとファーニャは言葉を失う
それは多分・・・僕の言葉に納得した等では無く、僕が理屈では意見を翻さないであろう事を理解したのだろう
「・・・だったら私は今すぐこの首を搔っ斬って、お前に詫びる。」
・・・だろうね
僕の知っている彼女であればそう言うだろう事は容易に想像がつく
だからこそ、それを止める対処方ですら僕には理解できる
「もしそんな事をするのならば、僕は君を許すことは当然しないし、心から君を軽蔑するよ。」
「っっ?!!」
「アカノ=エンドロール、君はこれだけ世界を滅茶苦茶にしたのにも拘わらず・・・自分は苦しむ事も無くその命で償おうと言うのかい?・・・君の命は世界と天秤に掛ける事が出来る程に重いものなのかい?」
「だ、だがっ!!!」
「それ以外に償う術が無いとでも言うつもりかい?」
「そ・・・そうだっ!!私にはそれ以外に「自惚れるなよ、アカノ=エンドロール。」」
僕の放った言葉に彼女の貌が歪む
けれども僕はそんな彼女を無視して言葉を続ける
「お前の罪は最早償う手段がない様な罪だ。お前が死のうが生きようが許される様な罪ではない。」
「・・・・・・」
「けれども僕に勝利し、僕を殺せばこの世界でたった1人、僕だけはお前を許してやると言っているんだ。その為に・・・たった1人に許される為だけにお前は剣を握らなければ駄目なんだよ。」
僕は彼女に冷たくそう言い放った
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