フロウの意志と足
彼女の攻撃を繰り出す度、風切音がヒュン、ヒュンと僕の耳元で声を上げる
「私となったあの御方は・・・無表情だった。」
「ハハッ、それは君も同じじゃないか?!」
そう軽口を叩いてはいるものの、内心は冷や汗が止まらない
掛け値なしに彼女は強い・・・
誰にもなってはいない彼女が素の能力で【真祖】に限りなく近い能力を有しているのは何故だろう?
(仮説は幾つかある・・・でも今はそれ所じゃないけど、ねっ!!)
彼女の斬撃を間一髪で回避しながら僕は距離を取る
だが彼女としてはそれを許容できないのだろう
僕が距離を開けた瞬間に一気に距離を詰めて来る、それの繰り返しだった
「けれどあの時・・・貴方の事を話すあの御方は・・・微笑んでいた。」
ーーーピューーー
左頬を斬撃が掠める
(どうやら此処へ来て、もう一段ギアが上がったのかな。)
今更ちょっとした斬傷なんて気にする必要はない
それよりも、如何にしてこの勝負に勝つかが何よりも大事だ
「微笑んでいたの。」
ーーービュビューーー
「分かる?微笑んでいたの。」
ーーービュビュビューーー
先程よりも彼女の攻撃速度が明らかに上がっている
僕は僕でアジャストしようと試みるも、僕の想定よりも斬撃が速くなっている事は明らかだ
「そっか、君はブロウドさんを本当に大切に想っていたんだね。僕はあの人を本当に大切な人だと思ってはいるけれど・・・正直、君には負けるかもね。」
「当然。」
彼女の攻撃を回避しながら話しかけるのは危険ではある事は自覚している
けれど、今以上に絶好のタイミングは無いのも事実だ
「そんな君にブロウドさんから伝言を預かっているよ。」
「・・・?」
「さっき僕が君に取り込まれそうになった時、ブロウドさんと逢ったんだ。」
「・・・そんな事」
ホンの僅かだが彼女の斬撃速度が鈍くなる
僕は彼女の攻撃をあからさまに回避する様な事はせず、敢えて掠り傷を負いながら言葉を続ける
「有り得ない?でも僕意外に君に取り込まれそうになりながらも生還した者はいるの?」
「・・・いない」
「だろ?じゃあ僕の伝言を聞きなよ。」
「・・・・・・」
僕の言葉に返答こそないものの、彼女の目は早く話せと求めていた
「先ず、ブロウドさんは君に感謝していたよ。自分の求める形では無かったが今まで付いてきてくれて有難う、ってね。」
「・・・・・・」
「そして続けてこう言っていた、『君は誰にも何も与えられなかったが故に私に依存していた。私自身それに気づいていたにも拘わらず、君に何もしてやれなかった事に申し訳なさがある。だが、誰もがいつかは自分自身だけの意志と足で立たなければならない』ってね。」
「・・・・・・」
「そして最後に、『これから自分自身で旅立つ君へ、そして君が君であるために細やかではあるがプレゼントを渡そう』って言っていたよ。」
「プレゼント・・・」
「・・・『フロウ』、その名がブロウドさんから君へのプレゼントだ。」
「・・・フロウ」
その名を聞いた瞬間、僅かに彼女の動きが停まる
そしてその瞬間、僕は拳を振り上げて彼女へ向かって渾身の一撃を繰り出したのだった
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