クロノの規定な否定
「・・・・・・」
今僕らは向かい合って、彼の出してくれた飲み物を飲みながら無言の時間を楽しんでいる
死んだ後でも味を感じるという事実は非常に僕を驚かせた
こうやって彼と向かい合い飲み物を啜っていると改めて誰と居るかが大事なんだなと自分の推測が当たっていたと実感する
「・・・・・・さて」
だけどどうやら死後も時間と言うモノは無限ではないらしい
僕らが飲み物を飲み終わり、ホッと一息をついたタイミングでブロウドさんが口を開く
「君が此処に来たという事は・・・残念ながら君は彼女に負けているという事で良いかな?」
「えぇ・・・残念ですが。」
「・・・彼女は強かったかい?」
ブロウドさんの問いかけにに僕は無言でうなずく
彼女は良くも悪くもブロウドさんの向けるベクトルが常軌を逸していた
それを僕自身に向けさせる事はできたけれど、僕ではその全てを受け止める事が出来なかっただけだ
「彼女は・・・これからどうするのでしょうね?」
「・・・世界を滅茶苦茶にするだろうね。」
「えぇ、それは間違い無いと思います。その後に彼女はどうするのかな、と。」
重ねてそう尋ねるとブロウドさんは腕を組みながら思案する
「そうだね・・・多分彼女は『神』の場所へ向かうんじゃないかな?」
「・・・何のためにですか?」
「恐らくこの世界を監視する存在である『神』に対し反抗する事で、『神』が創った世界が失敗作だと自覚させる事が大きな理由だろう。」
「成程・・・」
「そして小さな理由として、彼女自身は自分の生は決して良いものでは無かった。だからこそ『神』にせめて一撃喰らわせたいという気持ちもあるだろうね。」
「一撃ですか・・・『神』相手に喰らわせそうでしょうか?」
「どうだろうねぇ・・・一撃くらいは喰らわせそうな気はするがね。ただ・・・間違いなく敗北するだろうね。」
ブロウドさんの言葉を聞いてやはり『神』はとんでもないなと考えてしまう
そしてもしその場にいれば僕は・・・彼女の方を応援してしまうだろうと自覚し、内心驚いてしまう
まぁどちらも余り思い入れの無い相手だからな・・・
「因みにその一撃を喰らわせるのは彼女の中に居る【真祖】ソテルアスでも私、【真祖】ブロウドでもないよ。君は一体誰の事か理解できるかな?」
「・・・僕の事ですよね。」
僕が思案している中、ブロウドが投げかけてくる唐突な質問に僅かに思案して謙遜する訳でもなくそう答えた
彼女の中に居るソテルアスが役不足だとは思わないが・・・彼がダメならば僕しかいない
弱体化したブロウドさんでは残念ながら役不足だろう
「その通りだよ。彼女の中に君が居ても精々が一撃喰らわせる事ができるかどうかでしかない。では逆に君自身と『神』が戦ったとしたならばどうなると思う?」
「・・・希望的観測も含めて言うと、一撃位は喰らわせたいなと思います。」
僕に勝った彼女が一撃喰らわせることが出来るかどうかというレベルなのならば、僕であればより可能性は狭まっている
だがブロウドさんは僕の答えに対し静かに首を横に振る
「残念ながら私はそう思わない。もしも君が『神』と対峙したのならば・・・私は50回に1回は君が勝つと思っているよ。」
「いや無理でしょ?!!」
ブロウドさんの唐突な予測があまりにも現実離れしていて思わず即座に否定してしまった
いつも有難うございます。
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