クロノと薄幸の発祥
「・・・【嫉妬タル心ノ臓】を使用しなくても良いの?」
「ん。」
何ともやり切れない気持ちに蓋をしながら尋ねるが、その回答は余りにも簡潔なものだった
僕個人としては例え僕に非が無くとも多少の罪悪感が募る
僕の人生も決して幸せなだけじゃなかった
けれど、彼女の人生よりも不幸だったか?と聞かれれば僕はNoと答えるだろう
それは常に父さんや姉・・・アカノ=エンドロールが僕の傍に居てくれた
だからこそ僕は差別を受けたり、迫害されても僕は笑っていることが出来たのが大きい
それに反して彼女は・・・支えてくれる人も居らず、感情を削ぐ事により自分を守っていた様な人生を過ごしていた
血の繋がった姉弟だからなのか、同じ黒髪黒目だからなのか・・・理由は定かではないけれど、僕の中に確かに罪悪感が極小ながら存在しているのだ
「がっ?!!!!」
「・・・勘が良い。」
そんな事を思案していると、背後から攻撃を受けた
どうやら首を狙っていたらしいが、身をくねらせて間一髪致命傷を避ける事には成功した
ただ・・・背中には決して浅くない斬り傷を受けてしまったが・・・
「・・・酷いな。このローヴはブロウドさんから貰った物なんだけど。」
「・・・だったら尚更壊す。」
ブロウドさんに貰ったローヴはちょっとやそっとじゃ傷を付けられない筈だ
それをいとも容易く斬ることが出来る事に驚いてしまう
驚いてしまうが、それよりも・・・
「・・・それが本来の力?」
「ん、私は【真祖】よりは弱いけど・・・他より強い。」
「・・・・・・」
「満身創痍な貴方なら、私の方が強い。」
「・・・・・・」
僕は彼女にそう告げられ、初めて気づく
ソテルアスの姿であった彼女は間違いなく死にかけていた
にも拘わらず、今の彼女には傷1つない
(僕は馬鹿かっ?!!真っ先に気づくべきだっただろっ?!!)
詰まり彼女・・・いや【嫉妬タル心ノ臓】の能力は姿を変化させれば今まで受けたダメージもリセットされるという事だ
対して僕は、文字通り満身創痍・・・ソテルアスの力半分があるとは言え、身体がまともに動かない今の状況では素早さに翻弄されて攻撃が当たらない可能性が高い
更に言うならば魔力も枯渇しかけている僕は【大罪スキル】の使用も不可能に近い・・・
(あれ・・・これってもしかして)
「ん、詰んでる。」
「っっ?!!!」
僕の内心を的確に読み取り、代弁すると同時に攻撃を仕掛けてくる
僕の持つ【タイザイ】は彼女にとっても特攻効果がある代物だ
彼女の猛攻を必死に捌きながら反撃を試みるも・・・すの悉くが回避される
「流石、あの御方のローヴ。でも・・・」
「があ゛ぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!!」
そう言うと同時に一気に身体中に斬撃が降り注ぎ、容赦なく身体の至る箇所が斬撃で傷を負ってしまう
「当たらなければ問題ない。」
「・・・あ。」
その言葉と同時に斬られた箇所から一斉に血飛沫が舞い散る
(・・・・・・綺麗だ)
そんな自分の血飛沫を俯瞰的な目で見つめながら、思わずそんな感想が頭に過ぎり・・・僕は倒れた・・・
視界がぼやけて意識を手放すその瞬間・・・
「これで私のもの・・・」
淡々としたそんな言葉と・・・
「ーーーーーーーーーーーーーーー」
誰かが誰かを呼んでいるかの様な叫び声が聞こえた気がした・・・
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