クロノの勝利と脅威
(・・・勝った。)
命の灯が今にも消えそうな【狂乱ノ道化】を俯瞰的に見ながらそう思う
実際、僕もかなりギリギリだった
身体内部に甚大なダメージを受けたからか意識が朦朧としている
それに加えて魔力も枯渇しかけている為、【暴喰王ノ口】で内部のダメージを喰うという試みも憚れてしまう
「な・・・ゼ・・・?」
ヒューヒューと呼吸しながら何かを聞いてくる
一体何を聞きたいのかと思案し、【狂乱ノ道化】が知りたいことを理解した
「あぁ・・・この剣の事かな?」
確かにその疑問は尤もだろう
傷ついていたとしても【真祖】、並みの剣では貫く事はおろか傷つける事すら容易ではない
だが・・・ソレが並みの剣でなければその限りではない
「この剣は特別性でね・・・ブロウドさんの愛剣で【タイザイ】という名なのさ。」
「・・・ぁ・・・」
僕の言葉に対しても言葉が発する事が出来ないのであれば・・・死期は近い
うつ伏せになっている背に足を掛け、剣で首を狙う
「【狂乱ノ道化】、さよならだ。もう少し君の事を知りたかったけれど・・・もう時間だからね。それに苦しみながら死んでもらうのも良いけれど・・・ブロウドさん達を殺したお前はやっぱり僕自身でケリを付けたいんだ。」
「・・・・・・」
最早言葉を発することなく目を閉じかけているのを見るに、【狂乱ノ道化】はもう御終いだ
「さようなら。」
そう言って躊躇い無く剣を首に目掛けて振り切った
振り切った のだ
振り切った のに
ソコには【狂乱ノ道化】は居らず、僕の剣は宙を斬っただけとなった
「っっ?!!!」
その事実に一瞬頭が真っ白となるが、我に返り辺りを見渡す
「・・・・・・」
辺りを見渡すと先ずは横たわっているルーシャ達が見える
瞳が虚ろで僕の方に視線を向ける余裕すらないのが理解できる
「・・・・・・」
次に、アカノ=エンドロールと視線が合う
だが彼女も僕の方へ視線を向けてはいるものの、僕を見ている様な表情ではなく何かブツブツと呟いている様だった・・・
「・・・・・・っ?!!」
そして最後に・・・呆然と立ち尽くしている少女が見える
その女性は僕よりも年齢は幼く見え、年齢は12、3位に見えた
舞台の端に立ち尽くしており、戦闘態勢を取っている訳でも無い少女はある種異様だった
そして何よりも異様だったのは・・・
「姉・・・さん・・・?」
その少女は僕と同じく・・・黒髪黒目であり、その目の色は僕よりも黒く、そして濁っている様に見えた事だった・・・
◇
◇
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
頭の中での思考が定まらない・・・
私は今・・・誰になっているの・・・?
私は今・・・どんな能力を有しているの・・・?
私は今・・・どんな姿形をしているの・・・?
【魔神】クロノ=エンドロールに殺されかけたあの瞬間、私は死んだと確信していた
にも拘わらず、私は此処で立ち尽くしている
なんで?
なんで?
なんでなんでなんで?
私が私となった数百の私にはその様な能力を持つ私は居なかった・・・
私が今、どんな私になっているのか理解していないと私を上手く扱えない・・・
早く現状を確認しなくちゃ・・・
「姉・・・さん・・・?」
そんな事を考えていた私に向かって【魔神】クロノ=エンドロールは姉と呼んでくる
とするば、私は今アカノ=エンドロールの姿になっているのだろうか?
でも・・・私の中にアカノ=エンドロールは居ない・・・居ない筈だ・・・
「・・・・・・・・・・・・!!!!」
【魔神】クロノ=エンドロールが姉という可能性がある存在がもう1人居る事に気づく
私は恐る恐る・・・自分の髪に手を当てて髪の色を確認する
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
やはり、私の髪色は・・・黒だった・・・
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