クロノの疑問と鬼門
「があぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!!」
咆哮にも似た様な叫び声をあげながら【狂乱ノ道化】は吹き飛んで墜落していく
ここから追撃を仕掛けていくのがセオリーではある
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
あるのだが・・・僕は僕で思った以上の疲労感で片膝をつき息を整える事が精一杯だ
殆ど魔力を使用しない素の攻撃力では今の所、僕の方が若干優位だ
だが・・・あれ以上に憤怒し、尚且つ怒りの余り我を忘れるという事が無いのならば今度は僕が負けるだろうと確信している
「フフフ・・・ハハハハハ・・・ハハハハハハハハハハーーーーーーーー!!!!」
だが僕のそんな懸念を吹き飛ばすかの様に豪快な笑い声が場に木霊する
声のする方へ視線を向けると【狂乱ノ道化】は仰向けのまま、高らかに笑っている姿が見えた
「ハハハハハッッ!!!見事っ!!【魔神】よ・・・見事だっっ!!!」
「・・・お褒め頂き光栄だね。」
「褒めるともっ!!!この世の頂点と言っても過言ではない【真祖】足る我の力を奪い、更に【大罪スキル】にて能力を増加させた我に競り勝つなど・・・褒めるしかなかろうがっ!!」
そう言って僕を褒めたたえながら無造作に立ち上がる
正直もう少し甚大なダメージを負ってくれていればなぁとも思ったが、そこまで上手くはいかないらしい
「いやいや流石は【魔神】、我との約定を見事に履行してくるとはな。我は今・・・貴様を殺すという事しか思い浮かばんぞっ!!!」
「っっ?!!!【暴喰ノ口】っっ!!!!!」
【狂乱ノ道化】は叫ぶとほぼ同時に、特大の炎球を投げかけてきたが【暴喰ノ口】で消滅させていく
「これで殺せるとは思っておらんわっっ!!!」
「ふっっ!!!」
その隙を突いて背後から強襲を仕掛けてきた
幾ら何でも背後からの攻撃をまともに喰らうとタダでは済まない
僕はしゃがむと同時に背側蹴りを仕掛け相手のバランスを崩し、そのまま側面を思い切り蹴りつける
「っっ?!!!!」
僕の蹴りはまともに相手にダメージが通った
通った手応えがあるにも拘わらず、【狂乱ノ道化】は吹き飛ぶ事も無く反撃を行ってくる
「・・・思った以上にタフだね。」
「ふんっ、生きるか死ぬかの瀬戸際なのだ。今更多少のダメージ等どうでも良いわ。」
【狂乱ノ道化】の反撃をスレスレに回避し、距離を開けて思わずそう呟くと【狂乱ノ道化】は不敵な笑みを浮かべてそう答えてくる
確かに奴が言っている事は正しいだろう
ダメージを受けないに越した事は無いが、それに気を取られるあまり決定機を逃すのは愚の骨頂だ
(だが・・・この違和感はなんなんだ?)
僕は【狂乱ノ道化】の戦い方に違和感を感じていた
ナニが・・・というのは未だハッキリと言語化できないが・・・
(こうした違和感は無視してしまうととんでもない事になったりするんだよね・・・)
だからこそ僕はこの違和感の正体を探るべく、時間稼ぎを行う事にした
先程までだと使い所がない手札だったが・・・僕を認めた今ならば応じてくれるだろう
「ところでブロウドさんはお前が僕の実の姉だと言って、お前は認めていたが・・・それは本当なのか?」
「なんの時間稼ぎかは知らんが・・・まぁ良い。確かに我は貴様の実の姉だろうな。」
「僕としては今更どうでも良い事だと思ってはいるけれど・・・お前は僕を殺すという事に何も思わないのか?」
僕がそう疑問を投げかける
すると一瞬呆けた表情を浮かべ・・・声を押し殺しながら俯いた
「クックッ・・・我が貴様を殺す事に何も思わないのか?だと?」
「あぁ、仮にも実の姉弟なんだろう?」
「クックックックッ・・・思うわっっ!!!貴様を殺す事を考えると様様な感情が我の胸の内を掻き毟って来るわっっ!!!」
そう何とも言えない表情で大仰に答えてきた
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