クロノの拒絶と否決
「クロノ・・・」
声がする方へ再度視線を向けると今度は僕の方へ視線を向けていた
僕をクロノだと認識したのだろうか・・・?という疑問が浮かび上がる
「クロノ・・・なのか?」
「・・・・・・」
あれだけ姉さん・・・いやアカノ=エンドロールと通じ合いたいと渇望していたのに、今の僕には不思議なほど彼女に対する親愛の感情が浮かび上がらない
それどころか、彼女に対する憎しみの感情の方が強かった
厳密にいえば彼女では無く【狂笑道化団】に所属しているすべてに対してだが・・・
「クロノ・・・」
「・・・黙っていろ、アカノ=エンドロール。」
「・・・・・・え?」
「お前は少なからずブロウドさんの死に関与している。いや、ブロウドさんだけではない・・・父さんや他の皆の死にも関与している。・・・今のお前に掛ける言葉は僕には、ない。」
「っっ?!!!」
死の宣告を受けたかの様な表情を浮かべる彼女を無視し、僕は【狂乱ノ道化】の方へ視線を向ける
「【狂乱ノ道化】・・・いやブロウドさんの言葉を信じるのならば僕の実の姉、という事になるのかな?」
「・・・あぁそうだろうね、あの人族がこの場に現れた時にピンときたよ。君はあの糞野郎から逃げる事が出来た裏切り者の弟だってね。」
僕を見下げた視線を見る限り、目の前のコレは実の姉なのだろう・・・
ただ残念ながら僕はコレを姉だとは思えない
思えないが・・・
「・・・じゃあ実の弟から姉に最初で最後のプレゼントをあげようか。」
「・・・ほう。」
「確実にお前ならば気に入るだろうね。」
「・・・言ってみたまえ。」
「今からお前が死ぬまでの僅かな時間・・・お前に僕を殺すという叶わぬ生き甲斐をプレゼントしてやろう。」
「・・・・・・・」
「お前は死ぬまで生き甲斐を持つ事が出来るんだ・・・嬉しいだろ?」
「プッ!!・・・クックックッ・・・・・・ハッハッハッハッ!!!!」
僕の心ばかりのプレゼントは大層お気に召したらしい
先程まで無表情でしかなかったにも拘わらず、思いのほか嬉しい様で大爆笑と言って差し支えない程に笑い転げている
「クックックッ・・・それは何かい?君が?私を?殺すって事かい?」
「その通りだ、【狂乱ノ道化】、お前はその虚無感を失くしたまま死ぬ事が出来るんだ。一度味わった虚無感が無くなるのならこれ以上に無いプレゼントだろ?」
「クックックッ・・・あぁ、その通りだ。君の言う通り、思いの外嬉しいプレゼントだよ!!・・・それが叶えば、だけどね。」
「勿論叶うさ。僕は多分・・・これまでで此処まで誰かを殺したいと思った事は無いからね。」
「フン・・・明確な殺意など、乖離した実力差の前では無力以外のなにものでもないよ。まぁ良い・・・暫しの間生き甲斐を楽しませてもらおうか。・・・あの時と同じ様に絶望の淵に突き落とされて死んでいくがいい。」
吐き捨てるかの様にそう言い放った瞬間、【狂乱ノ道化】は【真祖】ソテルアスへ姿を変貌させる
僕としては変貌する瞬間を狙ってダメージを与えたいという気持ちはあった
あったが・・・どうも自分の中の欲求には逆らう事は出来ずに睨みつける様にその場に立ちふさがってしまった
「隙を見て我を攻撃してくるかと思ったのだが・・・これは見込み違いか?」
どうやら僕が何もせずに立ち呆けている事が【真祖】に圧倒されていると解釈したらしい
・・・初見であればいざ知らず、今の僕にはそんな事で圧倒される所以はない
「馬~鹿・・・お前の自信と傲慢、独り善がりを纏めて叩き潰したいから待っていただけだよ。」
僕が挑発めいてそう告げると、どこからかビキッッという音が聞こえた様な気がした
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