クロノの黒い報い
「求めて求めて求めて求めて・・・そして手に入れた。にも拘わらず私は満たされない・・・私と文字通り一心同体となっても・・・私は・・・」
「・・・勝手なことを」
目の前のブロウドさんに模した【狂乱ノ道化】に吐き捨てる様に呟く
コイツの勝手な想像、妄想、盲信の為にブロウドさんはいなくなった
それだけはどうしようもない真実だ・・・
「ク・・・クロノッッ!!!!」
【狂乱ノ道化】に殴りかかろうとしたその時、脇から姉さんの叫ぶ様な声が聞こえて思わず動きが止まる
けれども姉さんの視線は僕では無く・・・【狂乱ノ道化】を映していた
「ク、クロノ・・・その姿はど、どうしたんだ・・・?そ、それに・・・」
「『どうして私の実力が変動しているか』かい?」
「そ、そうだ・・・クロノ・・・クロノなのか・・・?」
姉さんは狼狽えるかの様に【狂乱ノ道化】へ唐突に疑問を投げかける
姉さんからすれば弱い筈の僕が目の前で強くなったり姿を変化させているのだから疑問に思うのも当然だろう
「うん・・・君の疑問も尤もだよ、アカノ=エンドロール。」
「・・・・・・え?」
そしてそんな疑問に対して【狂乱ノ道化】は何食わぬ顔で返答しようとする
今までの話の流れ上、コイツは姉さんを傀儡にする為に僕の姿を模して虚偽を言い放っていた筈だ
まさかそれを今になって・・・?
「アカ=エンドロール、君の疑問に答えるとしよう。私はクロノ=エンドロールで間違いないよ。何故なら人族だった彼に最後の一撃を放ち殺した上で溶け合ったのだから、ね。」
「・・・・・・え?」
「簡潔に結論だけ述べよう。私はクロノ=エンドロールでもあるが君と長年連れ添ったソレではない。」
「・・・・・・え?」
「君が真に求めるクロノ=エンドロールは私ではなく・・・彼だよ。」
【狂乱ノ道化】はブロウドさんの姿のままに僕の方を指さす
そのやりとりを見て、僕は1つの結論に辿り着く
「あぁ・・・そっか・・・お前はもう目的を達成したんだな・・・」
「っっっ?!!!!」
静かに仮面を外し・・・頭を覆っていたフードを脱いで、【狂乱ノ道化】を睨みつける
詰まりコイツはブロウドさんと溶け合った時点で全ての目的を達成させたんだ・・・
そしてその後の事は文字通り・・・どうでも良いと思っているんだろう
その結論に辿り着くと頭の中がグツグツと沸騰してくる
「その通りだよ、【魔神】クロノ=エンドロール。私は私と溶け合う事以外の全てがどうでも良かった。本来であれば私が希望していた世界をご覧頂いてから溶け合う事を理想としてはいたが、ね。・・・だからこそ今はどうでも良いんだよ。今更何かどうなろうとも私の願いは叶ったのだからね・・・ただ惜しむらくは、喜びという感情よりも虚無感が心を占めるという事実だろう・・・」
「・・・本当に・・・お前のその考え方には心底軽蔑するよ。」
【狂乱ノ道化】を睨みつけながらそう答えるが当の本人は何とも思っていない様に映る
コレと戦うという理由は様々ある
殺された恨み、魔族領を滅茶苦茶にしてくれた報復、ブロウドさんの仇・・・
相応の報いを味わせてやるにはどうしたら良いのかと思考を巡らせる
「クロノッッッッ!!!!!」
そんな僕の思考を無遠慮にも遮るのは・・・【剣神】アカノ=エンドロールだった
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