ブロウドの真意と真因
「どうやら・・・私の本当の願いは世界の進化などでは無かったようだよ。」
「・・・・・・」
私は魔力の残りかすを使用し、ファイヤーボールを発動し彼女に向けて撃つ
だが発動したファイヤーボールは最早初級冒険者がはつどおうさせたソレよりも小さく、頼りない火となっているだろう
当然の様に彼女に触れる事も無く搔き消えて行ってしまう
「私はずっと、寂しかったんだろうね。誰も彼もが私を崇め、敬愛し、盲信する・・・対等に接してくれる存在なんて本当に・・・居なかった。」
何百年、何千年という時間は私を孤独にしていった
ソテルアスもファスも自分の身の丈に合った範囲のみの【真祖】となった
それにより私は彼らとの交流も殆どなくなってしまった
私は走るでもなく、少しずつ彼女の方へ近づき拳を振り上げるがその拳も触れることなく私ごと吹き飛ばしていく
「私が進化を願ったのはね・・・いつか私と対等に接してくれる・・・忖度も遠慮も無い家族の様な存在が生まれ出てくれることを願ったからなのさ。」
「・・・・・・」
フラフラと立ち上がり、再度ソテルアスに殴りかかる
だがやはりと言うべきか当然というべきか・・・私は再度相手に触れる事無く身体ごと吹き飛ばされてしまう
「私は・・・自分では気づいていなかったが・・・寂しがり屋なの・・・だろう。」
先程と同じ場面を味わうかの様にフラフラと立ち上がり、殴りかかって吹き飛ばされる
「クロノスの幹部達はね・・・一定の敬意を示しながら、も・・・私と気楽に・・・接してくれた、よ。」
繰り返し同じ場面を味わうかの様にフラフラと立ち上がり、殴りかかって吹き飛ばされるが私の口から言葉は止まらない
「ルー・・・シャはね、私が、誰かと酒を飲んでいると・・・怒りながら・・・窘めてくる、んだ・・・」
立ち上がり、殴りかかり・・・吹き飛ばされる
「ダン、キは・・・酒の席に・・・誘うと・・・何があって、も・・・付き合って・・・くれた。」
立ち上がり、殴りかかり・・・吹き飛ばされる
「ファー・・・ニャ・・・は・・・ファスの愚痴を・・・互いに・・・言い合った、り・・・ね。・・・ハハッ、これは・・・彼女には・・・ない・・・しょ・・・だな。」
立ち上がり、殴りかかり・・・吹き飛ばされる
「マリトナ・・・は・・・余りしゃっべって・・・はくれなかったな。・・・でも・・・いつでも黙って・・・私の話を・・・聞き続けていてくれ・・・た・・・」
立ち上がり、殴りかかり・・・吹き飛ばされる
「分かる、かい・・・?他の皆も・・・わた、しを・・・余り・・・特、別・・・扱いしなかった・・・のさ。」
立ち上がり、殴りかかり・・・吹き飛ばされる
「そ・・・して・・・クロ・・・ノ・・・く」
立ち上がり、殴りかかり・・・吹き飛ばされ・・・動けなく・・・なる
「ブロウドさんっっ!!!!」
最早指先一本も動かせない私の耳に、彼の声が聞こえる
(クロノ君はね・・・盲目的ではなく、私を信頼し・・・いつでも優しい微笑みで接してくれたのさ。そして私が間違えた時・・・身体を張って止めてくれるのもまた・・・彼なのさ。)
最早言葉を紡ぐ事すら叶わないが・・・私はそう誰かに語り掛ける
「・・・満足したか?」
「ブロウドさんっっ!!!!」
(・・・あぁ、満足だよ。)
【真祖】ソテルアスの姿を模した彼女が私の頭の上でそう語り掛けてくる
返答してやりたい気持ちが無い訳ではないけれど・・・私が言葉を紡げる力はあと1回しかない
それ故に彼女の言葉には返答が出来ない
その代わり、出来るだけ穏やかな目で彼女を見てやった
「・・・貴様は死ぬ訳では無く我の中で永遠に生き続けるのだ。そう、永遠に・・・」
「ブロウドさんっっ!!逃げてっ!逃げてくださいっっ!!!」
(・・・永遠に生き続けるという事は・・・永遠に死んでいる事と同義だよ。)
そんな感情を瞳に宿した私を彼女は徐に首根っこ掴んみだした
いつも有難うございます。
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