ブロウドと世界の願い
「・・・ブロウドさん?」
「おいおい【魔神】くん、君は今何をしようとしていたのかな?まさかとは思うが・・・私の敗北を宣言しようとしたわけじゃないよね?」
僕が敗北を宣言しようとしたのを肌で感じたのだろうか?
それは凄い事だとは思うけれど・・・それでも僕には彼が【真祖】ソテルアスに勝つイメージが一切湧かない
「・・・・・・ブロウドさん」
「うん。」
僕の呼びかけに一切の躊躇も無く応じてくる
それだけで僕の目から自然に涙が溢れ出してくる
「僕は・・・貴方に・・・生きていて欲しいんです。」
「うん。」
「僕は・・・貴方を・・・兄の・・・様な・・・」
「・・・そっか。」
初めて出逢った【真祖】は・・・怖かった・・・
何もせず、臨戦態勢を取られるだけで足が竦んだ
そして僕を生き返らせてくれたブロウドさんは・・・優しかった・・・
厳しくもあったが、何処となく暖かくて、僕の知らない事を教えてくれたり・・・頼りにもなった
再び出逢い対峙した彼は・・・どことなく寂しそうだった・・・
広く暗い居城でただ1人王座に座り、来訪者を待ちわびている子供にも感じられた・・・
僅か数年での出逢いでしかない
彼からすればそれこそ一瞬にも満たない様で出逢いだろう
けれど、僕からすればこれ以上にない位に苛烈さを含んでいた様な数年だった
怖くて優しくて寂しそうで・・・そして少しばかりお茶目な彼は兄の様に感じていた
「ブロウドさん・・・僕・・はぁ・・・あ・・なたに・・・死ん、で・・・欲しくは・・・」
「・・・・・・」
僕が今のこの瞬間、彼の言葉を無視して敗北を宣言しても良いんだ・・・出来るのならば・・・
僕は彼が納得しないままに敗北を宣言する事は・・・出来ない
だからこそ彼を説得しなければならないのに・・・感情が覆いかぶさって・・・上手く言葉が紡げない
「・・・『弟』よ。」
「っっ?!!!」
「私も君を弟の様に思っていたよ・・・。私よりも弱いのに、真っすぐで諦めない、優しくて思いやりがある・・・自慢の弟、とね。」
「ブロウド・・・さん・・・」
視線を上げて彼の顔を見ると・・・『兄』は僕に向かって微笑んでいた
その表情は憂いも無く、ただ僕を慈しむかの様な表情だ
「だからこそ弟よ、兄を止めちゃ駄目だ。兄というヤツはね・・・弟の前では格好つけるもんなんだからね。」
「あ・・・」
「勝てる負けるでは無い・・・死ぬ生きるでも、無い・・・そんな事に関係なく私がこの場に立ち続ける理由はね。」
「ブ・・・にいさ・・・」
「私がこの場に立ち続ける理由は家族の敵討ちと、弟に格好つける為・・・ただそれだけなんだからねっっ!!!!」
ブロウドさんは叫ぶかの様にそう言ってソテルアスに向かって距離を詰めよっていった・・・
◇
◇
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「・・・・・・」
息が上がってしまう・・・
これが疲労と言うやつだろうか・・・
魔力はとっくに底が付き、身体も無理やり動かしている様な状況だ
最初の方は私の調子が良いのか、ソテルアスの攻撃のパターンが身体に染みついているからなのか、攻撃を回避し反撃する事は出来た
だが・・・残念ながら掠り傷どころか、私の攻撃が彼の魔力によってはじき返されてしまい触れる事すら叶わない
「・・・我が君、ご満足いただけたか?」
ソテルアスに模した彼女は途中から私に攻撃を仕掛ける事もしなくなった
理由は単純、私を傷つけずに溶け合う方が彼女の希望に近いからだろう・・・
私の攻撃が触れる事さえないのならば、後は私が動けなくなるまで何もしない方が良い
それが彼女の判断なのだろう・・・
「満足・・・か、とっくに満足はしているとも。しかし、ふふっ・・・」
「・・・何が可笑しい?」
突如笑いがこみ上げてくる
そう、私はとっくに満足していたのだろう・・・
「いや、自分の事は幾星霜経っても分かっていないもんだなと思ってね。」
私はこみ上げてくる笑いを抑えて彼女にそう呟いた
いつも有難うございます。
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