クロノの舞台と不退
「・・・・・・」
私は【不刻響命】を解除すると同時にサイクスの居た場所を確認する
するとそこにはサイクスだったモノが地に伏しているのが視認できた
魔力を探ってみるが、やはり魔力の欠片も感じない
「そこまで・・・だね。自分で宣言するのもなんだけど私の勝ちで良いのかな?」
「「「・・・・・・」」」
そう皆に確認を取ってみるが誰もなにも発しない
クロノ君だけは何が起きたかは理解できるだろうが、他の者からすれば瞬きをする間も無く気づけばサイクスが死んでいたという状況だろうから無理もないだろう
「・・・・・・」
そうする内にクロノ君の姿に模した彼女・・・【狂乱ノ道化】が舞台に上がり、サイクスの亡骸を抱きかかえた
表情は見えず、どの様な感情で彼の亡骸を抱きかかえているかは知る由もない
だが顔はサイクスの亡骸へむけたまま、唐突に私の方へ言葉を投げかけてきた
「・・・・・・我が君」
「・・・なんだい?」
「これが・・・貴方様のお答えでしょうか?」
「・・・そうだね。私には君たちの目指す進化の形は不要だよ。」
「・・・そうですか。」
彼女はそう言った後、頭部を抱き、身体部分は引きずり舞台から降りて行った・・・
◇
◇
「クロノ・・・」
「・・・・・・」
目の前で俯きながら私の横を無言で通り過ぎる
その背中は何をどう思っているのかが理解できず、私はそれ以上何も言えないでいる
「・・・・・・」
クロノは【狂悦ノ道化】の亡骸の前で暫く跪いていたが・・・徐に立ち上がり私の前をすり抜けて舞台に上がろうとする
「クロノッ、大丈夫なのかっっ?!!!」
「・・・・・・」
「辛い気持ちは・・・分かる、お前にとっては死地を乗り越えた仲間なのだろう?次は・・・私が出るっ!!お前は先ず心を落ち着かせるべきだっ!!!」
そう言って精一杯励ます私に、クロノは初めて視線をこちらへ動かすが・・・
「ひっ!!」
「大丈夫ぅぅ~~????何を言っているんだ姉さん・・・僕はこれ以上に無い位に清々しい気持ちで一杯なんだよ~???」
そう答えるクロノが淀みきっており、私は思わず悲鳴を上げてしまう
「クロ・・・ノ・・・?」
「クロノ・・・クロノ、ね・・・ハハッ!そう、僕はクロノだ。クロノ=エンドロールだ・・・だからこそ次は僕が出なきゃ・・・ね。」
「っっ?!!!駄目だっ!!!そんな精神状態で【真祖】の前に立つなんて死にに行く様なものだぞっ!!」
「・・・・・・」
ただでさえクロノは・・・弱い
にも拘わらず、今の精神状態で【真祖】に勝てるとは到底思えなかった
けれども当の本人は、私の思いなどお構いなしにズンズンと進んでいく
「クロノッッ!!!」
「・・・五月蠅いなぁ。」
「・・・・・・え?」
愛する弟の突然の一言に私は思わず固まる
そんな私にお構いなしにクロノは不敵な笑みを浮かべたまま言葉を続ける
「姉さんもそろそろ弟断ちするべきだよ。そもそもただ弱いだけの僕が【狂笑道化団】を率いるなんて事、常識的に考えて出来る訳がないだろ?・・・まぁ見てなよ、僕がどうしてこの場に居るかを姉さんに教えてあげるよ。」
「・・・え?」
吐き捨てるかの様にそう言い放って、そしてそのまま舞台へ上がっていった
「・・・え?」
私と言えば・・・クロノに言われた言葉が衝撃的で呆然とそのまま固まり身動きを取ることが出来ないままだった・・・
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