ブロウドの最期の裁魂
「誤解の無い様に伝えておくけれど、私は決して君たちが嫌いだったという訳では無いんだよ?」
「ただ・・・君たちの考えのまま突き進んだ先に私が求めるモノはなかったんだよ。」
「君が記録にすらしなかった存在・・・それこそが私の求める進化の先なのかもしれないね。」
ゆっくりと彼の方へ歩みへ進め、眼前で私は優しく諭す様に告げる
この神に創られた世界では私ですら想定範囲内な存在だろう・・・
本当の意味で独り立ち出来る世界を創り上げるためには神すら対等に接しなければならない
何故なら対等でない存在という事は庇護下に収まるという事なのだから・・・
「サイクス・・・聞こえているかい?そもそも君は私に進化の形を見せる為に動いていた訳じゃないだろう?」
「君は・・・祝福され生まれ落ち、迫害され、自分の仲間を求めて旅立った・・・」
「だが君は迫害され、裏切られ、殺されかけ、貶められ・・・そんな理不尽を捻じ伏せている内に【不吉ノ象徴】と揶揄される様になり・・・そして何時しか壊れてしまった。」
「切欠は・・・仲間が欲しいという些細な願いだったのに、ね・・・」
「ねぇサイクス、聞こえているかい?・・・君は仲間を求めていた筈なのに私と出逢ってしまったが故に・・・何時しか仲間では無く、進化の形として自分と同じ黒髪黒目を求めてしまった。」
彼は・・・彼こそがこの世界で神による被害を最も被った存在であり、最初に神に逆らった存在なのかもしれない等と思わずそう思ってしまう
「君は・・・この世界に負けてしまったけれど・・・君の創った記録にすら残さなかった存在が、新しい世界を創り上げてくれるかもしれないよ?」
「その世界では私たちの様な存在は不要だよ。・・・私も直ぐに逝くだろう。少しばかり先に逝っていてくれ給え。」
瞬きすら行わない彼の首筋に剣を添えて、ズブズブと嫌な感触を味わいながら首を斬り落としていく
首と胴を綺麗に分け隔てた後、今度は心ノ臓に刃を突き立て、ホンの僅かでも生きている可能性が無い様に突き刺したまま刃を回転させ、心ノ臓をズタズタにした
【不刻響命】
クロノ君の庇護下に収まっている間に僅かばかり回復し、再度使用できる様になった私のスキルだ
クロノ君の持つスキル【暴喰王ノ口】は刻すら喰う悪食なスキルだったが、【錬換師】の称号が持つスキルは違う
明確に何処をどうしてどの様にするかを術者の操作に委ねられる
「【魔皇帝】クラスの実力しか有しない今の私が、君に勝つ手段はこれしかなかったからね・・・」
顔と胴体が分かれ、心ノ臓がズダズタとなったサイクスを眺めながらそう呟く
【不刻響命】を解除した私は最早【魔王】にも圧倒的に劣るレベルまでに実力が低下しているだろう・・・
「ふむ・・・」
最大限に今できる事を思いついた私は行動に移す事へ決めた
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私は今できる事を行い、私は再度サイクスの前に移動する
なんだかんだで彼との付き合いも長かった・・・
最終的には詰まらない存在に成り下がってしまったが・・・それでも付き合いは長かった
(・・・・・・)
最後に何か声を掛けようかと思案したが・・・どの言葉も軽くなってしまう気がして・・・私は彼に言葉を告げる事を止め、その代わりに彼の頭を昔みたいに少しだけ・・・撫でた
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