ブロウドの残酷な宣告
「サイクス、待たせて悪かったね。」
「・・・いえ、我が君がされることに対して私が不満を持つ訳が御座いません。」
「そうかい・・・それは君の良い所であり悪い所でもあるねぇ・・・」
悪い所だと指摘され不思議に思う
我が君の行うこと全てに意味があり、そして最善且つ崇高な行動原理なのだ
「悪い所・・・でしょうか?」
「そうだよ。誤解しているのかもしれないが私は全てを肯定してくれる存在を欲している訳では無いんだよ。」
馬鹿みたいに言葉を反復する私に対しても補足説明を付して言葉を続けられる
けれど、我が君からの言葉は衝撃的だった・・・
何故なら否定しようにも我が君のお言葉、行動、思考にその材料は見当たらないのだ
「それは・・・「それにね、私自身はこの世界の進化を欲しているし見届けたいと思っていた・・・けれど1度でも私が君たちに懇願したことはあったかな?」」
「・・・御座いません。」
確かに我が君は一度も我々に指示を行う事も求める事も無かった
だがそれは、私たちの事を信じているという心の内の裏返しでは無かったのだろうか?
「そもそもだね、君たちは誤解しているかもしれないが・・・私が君たちの前では無表情であったのは決してこの世界に憂いていた訳でも、この世界が退屈だったという訳でもないんだよ。」
「・・・と申しますと?」
聞きたくない・・・
聞きたくないが・・・我が君のお言葉を聞かないなんて事が許されるはずがない
私たちの存在を否定するかの様な未来が近づいている事を理解しているにも拘わらず・・・
私は我が君の言葉を聞かないという選択肢は存在しない
「簡単な事さ。君たちがつまらなかったんだよ。」
「っっっ?!!!」
「君たちは私の前では奴隷、若しくは家畜の如くヘリ下り肯定してくる。当初は私も多少の言葉を告げてはいたが返ってくるの言葉は畏まりました畏まりました畏まりましたと一言一句違わない文言・・・。そんな事が続いてね、私は君たちに期待する事を諦めたのさ。」
「で、ですが我が君っ!!我らは我が君の為にっ!!!」
「私の為に求めていない方向性に突き進んまれても迷惑でしかない。・・・まぁ、君たちの向かう先に私の求める希望があるのかと放置していた事が悪かったのだがね。結果として君たちの言う面白い世界で私が笑顔になる事は無いし、私の求める進化の形も存在しない。・・・『君』が進化の形だっけ?とんでもない、『君』が世界に溢れかえったのなら私は迷う事無くこの世界を滅ぼすよ。」
「っっ!!!!」
私は我が君の無情な宣告に言葉を失う
魔族と人族が1つに溶けた結晶の形・・・それが私だ
自分で創造するまでにただの1人とも出会う事が無かった『私』という存在
それこそが我が君の求める答えの形だと信じて疑わなかった
それを他ならぬ我が君に否定されてしまった・・・
「我が君・・・私は・・・私は・・・」
「サイクス、私が君に行う最初で最後の命令だよ。・・・私に刃向かい、私を害して、私の命を刈り取りなさい。」
私の告げようとする言葉を切り捨てて、我が君は私に初めて明確な命令を告げてくる
当然、私にそのお言葉を拒否する権利など有する事は無く
「・・・畏まりました、我が君。」
そう答えて全身全霊で我が君を害する事を決意した
「では【狂悦ノ道化】サイクスVS【真祖】ブロウド・・・始め、だね。」
そんな私の決意とは裏腹に、我が君は淡々と開始の合図を宣言してきたのだった・・・
いつも有難うございます。
「面白い&期待している」という方は★&ブックマークを是非ともお願いいたします
ご感想やレビューも心よりお待ちしております