サイクスの好意と行為
「な、んで・・・?」
「君たちは勘違いをしている・・・私の称号【錬換師】は分解し変換し結合させる事が可能なスキルを持っている。」
私の質問に淡々と答えながらそれでも歩みを止めない
「うぁぁぁーーーーーーー!!!!」
威力ではなく手数と素早さに重点を置き一気に攻撃を仕掛けていく
ーーードンドンドンドンーーー
ーーーザシュヴバシュゴスッーーー
「分かるか?私は己の身体を形成する細胞を分解し、細胞を変換し、細胞と細胞を結合させた。だからこそ今の様な攻撃では殆ど傷を負う事は無い。」
明らかに直撃を受けたにも拘らず平然と歩みを止めずに近づいてくる
・・・私の攻撃が彼の歩みを1秒も足止めさせる事が出来ていない
「最初の話だがね、同じ理論で私は老いる事が無い。細胞をより若い細胞に変換し結合させる訳だからね。さぁ、これで理解できたかな?」
「あ・・・あ・・・あ・・・」
気が付けば私は跪いていた・・・
彼の後方には私が放った魔法弾が他の攻撃を吸い込んでいる
何の魔法かは理解できないが、闇属性に変換し結合したという事だろう
帰結する事実はたった1つ
(勝てない・・・)
ただそれだけだった
私の攻撃を変換し無力化するどころか攻撃へ転じさせることが出来る
そして私の攻撃が直撃したとしても細胞を変換し無かったことが出来る
にも拘わらず彼は私に触れただけで消滅させることが出来る
どう手札を切っても勝利への道筋が僅かも見当たらない
「理解できた様で何よりだ・・・御蔭で無駄な時間を過ごさずに済んだよ。詰まりはこれこそが私の答えなのだ。」
「・・・・・・?」
「『私』を創る・・・それこそが進化へと繋がりあの御方の夢を叶える手段なのさ。・・・まぁ今の所成功したのは1例だけで殆どは妊娠されず、妊娠しても出産がされず、出産がされても魔族にも劣る様失敗作ばかりだがね。」
「・・・クロノ様も?」
「あぁ、彼は例外だね・・・魔族どころか人族にも劣っていた彼は失敗作ですら無い。無かった事にした被検体だよ。」
「っ!!!」
怒りの表情を浮かべる私に対して掌をこちらへ突き出す
「ではさよならだお嬢さん。来世というものがあれば【不吉ノ象徴】には近づかない方が良い。」
そう言って徐々に掌が私に近づく
「ごめん・・・なさい・・・」
死を覚悟した私は思わずそう呟く
それは旦那様との約束を守れない申し訳なさからの謝罪・・・ではない
目を開けなくても旦那様が私の敗北宣言を行おうとしているのが分かる
でも・・・それでも旦那様が言い終えるよりも、この男の掌が私を消失する方が早いだろう
それにより旦那様はもう少し早く敗北を宣言していればとご自分を責められるだろう
だからこその謝罪・・・
そうして死を覚悟した私は無慈悲にも消失を迎えた
筈だった・・・
「それまで、だね・・・。」
「っ?!!!」
その声を聞いて思わず目を見開く
すると【不吉の象徴】の腕を掴んでいるブロウド様の姿が映った
「ブロウド様・・・」
「やれやれ・・・宣言と行動が逆になってしまったが、まぁ良いだろう?」
「なんで・・・?」
「君はファスミーヤの大切な愛娘だし、彼とも生きて戻ると約束しただろう?お節介だとは思うがそれで水に流してほしいかな。」
ブロウド様は軽口をたたくかの様に私の疑問に応答する
「我が君・・・何故なのです?貴方様に楽しんで頂こうと精一杯取り組んだ私共に不手際でもっ?!!」
「君たちの好意は嬉しくもあるがそれは不要かな。さて、再度宣言するがそれまでだ、勝者は【狂悦ノ道化】だね。」
ブロウド様は再度そう宣言した
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