ファーニャの違和感と忌避感
「さぁぁて時間稼ぎは完了しましたかぁ?」
「あら時間稼ぎだと分かっていて乗ってくれていたの?」
「えぇえぇ勿論ですよぉ。私共の目的はそちらさんに勝つ事ではありませんからねぇ。」
「・・・どういうこと?」
「そちらさんに勝つという事は飽くまでついでですぅ。まぁ気負わずとも私たちが居れば敗北は有り得ませんからねぇ。私たちの目的は『あの御方に楽しんでいただく』・・・この1点に尽きますからぁ。」
その言葉を聞き思わず歯噛みをしてしまう
結局の所、この男は私たち等は眼中に無いと言っているのだ
原初の直系たる妖精霊族の私も
人族最強と名高い【勇者】も、この世界で完全な上位称号を持つ【魔王】も【魔皇帝】も【魔神】も
【狂笑道化団】に対抗しうる唯一の存在である【魔神連合】ですら眼中に無いのだ・・・
(それは・・・その言葉は私たちに対する最大の侮辱よ・・・)
魔族とは合理で生きてはいない
元々本能のままに生きていた様な種族だ
言ってしまえば命なんかよりも誇りの方が圧倒的に比重が大きい
だからこそ、目の前の男のついでと言う言葉は何よりも許しがたい
「おぉっとっ!!!」
考えるよりも先に私は魔法を発動させる
刃を模した魔法が男にめがけて地面に沿って四方八方より攻撃を仕掛ける
不意打ちにも近い攻撃により男はタイミングを目算しながら跳躍して回避する
「分かってはいても回避できないでしょう?」
けれど私はその回避を容易に想像できていた
突発的な全方位による攻撃を繰り出されると身体能力の低いこの男は跳躍する事でしか回避手段は無い
先程と同様に宙に魔法の棘を発動させている今、奴は回避する事も攻撃する事も出来はしない
「貴方の敗因は自分以外の全てを見下した事による傲慢さよ・・・」
「なっ?!!う、噓でしょっ?!!」
動揺したかの様な表情を浮かべたその刹那、私は一斉に魔法の棘を男に目掛けて発射させる
「う、うそぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
男は絶叫の雄叫びを発しながら数十にも数えられる棘を無造作に受け続けるしかなかった・・・
◇
◇
「・・・ふう。」
気を吐きながら今や多数の棘に串刺しされた無残な亡骸を眺める
「強かった・・・ですね。」
攻撃は受けたが動けない程ではないし魔力は全く減少していない
勝敗と内容だけを見れば圧勝にも近い形で勝負を終えることが出来ただろう
けれど・・・当人とはしては決して楽な戦い等ではなく、寧ろ紙一重の勝負だったと思っている
彼の敗因は傲慢であったというその1点に尽きる
もし彼が傲慢ではなく、対戦相手と真摯に向き合う様な人物であったのならば私は決して勝利する事は出来なかった
それ程に彼の【錬換師】という称号が持つ特異性は異常だった
「私ですらあのスキルを持てばお母様ともまともに勝負できる自信がある。・・・全く恐ろしいロストネームだわ。そりゃあれだけの力、【不吉の象徴】と呼ばれる訳よ。」
ーーーゾクッーーー
刹那、背筋に寒気が襲い掛かる・・・
(なに、コレ・・・?こんな感情・・・知らない・・・)
初めて出逢う感情に頭が混乱する
一体、何故今にこんな感情が私に襲い掛かってくるだろうか?
(もう勝負は終わった筈でしょ?!終わった、終わった、よね・・・?)
そう言えばと今になって疑問に思う
何故ブロウド様は勝負が終わった事を宣言しないのだろうか・・・?
誰が見てももう終わっている筈だ
「くくくくく・・・・はははっはぁぁはははははははっははははっはーーーーーーーーー!!!!!」
そう思い至った瞬間、誰かの狂ったかの様な嗤い声が響き渡る
私が声のする方へ視線を向けると・・・そこには串刺しされた態勢のまま嗤っているあの男の姿が映し出された・・・
いつも有難うございます。
「面白い&期待している」という方は★&ブックマークを是非ともお願いいたします
ご感想やレビューも心よりお待ちしております!!