ファーニャの叱咤と真価
「いやぁ・・・殴られてしまいましたねぇ・・・」
私は【戦ノ王】さんに殴られ吹っ飛んでしまった
まさか、まさか【強欲王ノ腕】を【強欲ノ腕】に格下げして攻撃してくるとは考えていなかった
まぁ、それでも通常の人族ならば致命傷と成り得るのだから判断としては間違っていない
「寧ろ私に一撃を与えたのですからぁ、充分な戦果とも言えますねぇ。」
この私に一撃を与えたのだから僥倖と言わざるを得ない
一撃与えられた事に怒りはあるが、それ以上に見事だという感情の方が強い
「研究者は感情ではなく、客観的視点を持たなければなりませんからねぇ。それにしても・・・衣服が破けてしまいましたかぁ・・・」
はぁと溜息を付いて替えの衣服がない事を残念に思う
この様な格好をあの御方に見せ続ける事が心苦しくて申し訳が無い・・・
私は未だダンマリを決め込む【戦ノ王】の元へ近づいていく
殴られた事、衣服を破いた事、それをあの御方に見せ続けるという羞恥に対してどの様に償ってもらおうか・・・等と考える
(何をしても私の怒りに釣り合うとは思えませんが、ねぇ・・・)
取り合えず存在そのものを消そうか・・・
いやいや【魔皇帝】なんて滅多に手に入る素材ではない
【魔皇帝】と【聖女】を組み合わせても面白いかもしれない・・・
可能であれば主人格は【聖女】で調整したいものだが可能だろうか・・・?
「・・・あぁ」
私は【戦ノ王】の眼前に立つ
どうやら私は失念していたみたいだ・・・
これでは組み合わせるのは肉体だけしか不可能だ
だがこれで主人格は【聖女】で決まりだ・・・
私は首から上が無い【戦ノ王】を見下ろしながらそんな事を考えていた
◇
◇
「それまで・・・」
「ダンキッッッ!!!!」
ブロウドさんの声が聞こえると同時に一気に飛び出す
僕の声掛けに対してもダンキはピクリとも動かない・・・
それはそうだろう・・・
両腕は消失し、身体の至る箇所が抉り取られ・・・首から上が無い
一目見て『悲惨』という単語しか脳裏に浮かばない
「っっ!!!!」
「おぉ怖い怖い・・・そんなに睨まないでくださいねぇ~。」
此処までする必要があるのか?!!という気持ちを押し殺しサイクスを睨みつける
だが相も変わらず飄々としており僕の殺気も受け流しながらこの場を離れていく・・・
「・・・ふぅーーー」
落ち着け・・・
落ち着くんだ・・・
これは戦いだ・・・
誰かが死ぬなんて言う事は想定の範囲内だった筈だ・・・
父さんもマリトナも死んだ
ダンキも精一杯挑んだ結果死んでしまった・・・
例え死ぬ可能性が低いと考えていても可能性は0では無かった、それだけだ・・・
「・・・次は僕が出る。」
「・・・・・・」
後ろからやって来たファーニャにそう告げる
だが彼女は僕の言葉に何も言わない
それを無視して僕は言葉を続ける
「ダンキが何故死んだか・・・それは分からない。でも・・・ダンキがほぼ為す術無く殺された以上、僕が出るしかない。」
彼女には悪いが総合力で言えば僕に次いだ実力者はブロウドさんを除けばダンキだった
そのダンキが為す術無く殺された現状を省みると僕が出るしかない・・・
「・・・旦那様」
「・・・必ずダンキの仇を取る。そして・・・僕が奴らとの戦いを終わらせる。」
「旦那様」
「あいつ等を・・・あいつ等を必ずこの手で・・・」
「旦那様っっ!!!!」
ーーーバシンッーーー
ファーニャに呼ばれて振り返る
すると涙ぐんだ彼女から平打ちを受けてしまった
「・・・ファーニャ?」
感極まったのか、彼女は肩で息しながら僕を睨みつけ押し黙っている
「・・・私は信用出来ませんか?」
「違うっ!!そういう事じゃないんだっ!!」
「私ではアレには勝てないとお考えですよね?」
「勝てるとか勝てないではなく・・・君を失いたくないんだっ!!」
そう叫ぶ僕の言葉を聞き、暫しの沈黙の後にニコッと微笑み彼女は静かに口を開く
「旦那様、それを信用できないと仰っているというのですよ。」
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