ダンキの悲観と悲願
(どうなってんだ・・・?)
両腕が消失した状態で【狂悦ノ道化】に見下ろされながら混乱する頭を必死に働かせる
痛みは・・・無い
傷は・・・無い
現実として俺の両腕が無いという事実だけが突き付けられる
まるで最初から腕は無かった・・・そう言われても信じてしまう
(不味い不味い不味い・・・)
この人族を倒す攻撃手段が限られる
ならばどうすれば良い・・・?
どうすれば確実に攻撃を与えることが出来る?
「この勝負は僕たちの負「言うなっ!!!!!!」」
必死に頭を働かせている俺は主の言葉を思わず遮って叫ぶ
先ず間違いなく主は俺の敗北を宣言しようとしていた
「・・・ダンキ。」
「主・・・それだけは言わないでくれ。」
主の雰囲気から察するに予想通りの言葉を発しようとしたのが良く分かる
だが・・・それだけは言わないでくれ
【魔皇帝】として鬼人族として、魔族として・・・主の部下として・・・譲れない部分ってのが俺にもある
俺の我儘だとは理解している
だがそれでも俺には主から敗北宣言を行われることには納得できなかった
「・・・・・・」
俺の心情を察してなのかそれ以上主は何も言わなかったが、微かに拳から血が垂れているのを見て申し訳なさを感じる
「お涙頂戴の寸劇は終わりましたかねぇ?」
ーーブシュッーー
そう言われた瞬間、俺の肩に激痛が走り、それと同時に血飛沫が舞い散る
「があぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!」
痛みによりのぞけった瞬間、もう片方の方にも激痛が走り血飛沫が舞う
「があぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!」
「アハーーー・・・良い悲鳴ですねぇ~・・・」
激痛でのたうち回る俺の声を聞いて恍惚な表情を浮かべる
ソレの様は最早異質であり俺の理解を超えている
「はぁ・・・はぁ・・・お前は一体・・・何なんだ・・・?」
「何か?ですか・・・?先ほどにお伝えしたと思うのですが・・・魔族とは想定以上に馬鹿なのですかねぇ?まぁ良いでしょう、私の肩書を僅かばかりお教えしましょう。・・・痛みと引き換えですがね。」
「何を・・・があぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!」
気付けば俺の腿が抉られている
「私は【狂悦ノ道化】・・・」
「があぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!」
「私は【不吉ノ象徴】・・・」
「ふき・・・があぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!」
「【アービター】と呼ばれた事もありますねぇ。」
「があぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!」
「敬愛するあの御方は【壊れた歯車】と仰っておりました。」
「があぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!」
「【壊滅者】、【死ノ探究者】とも呼ばれました。あぁ2つ言いましたか・・・サービスですよぉ?」
「があぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!」
「【冒涜者】と言われた覚えも有りますねぇ・・・パッと思い出すだけでそんな感じですかねぇ・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・」
身体のありとあらゆる箇所が抉り取られる
最早勝機は殆どないも同然だ
「まぁお伝えできる所と言えばそんな感じですかねぇ。・・・そろそろ貴方の悲鳴も飽きてきました。【戦ノ王】さん・・・そろそろ開放して差し上げましょうかねぇ・・・」
そう言って掌を俺の顔面に近づけてくる
(殆ど勝機が無いという事は・・・極僅かに勝機はあるという事だ・・・)
無造作に近づけてくる掌よりも先に俺は【強欲王ノ腕】を【強欲ノ腕】に切り替える
「っ?!!」
「馬鹿がっ!!逃すわけないだろうがよっっ?!!!!」
表情が一瞬強張る【狂悦ノ道化】を無視し、背中から4本の腕が伸びてくる
2本の腕で左手と右足を捕縛する
そして息もつかぬ間に残りの2本腕で【狂悦ノ道化】の身体をひたすら殴りつけた
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