サイクスと次戦への視線
「それまで・・・という事で良いのかな?」
上階から【真祖】の声が響き渡る
その言葉に俺も筋肉馬鹿も黙ってうなずく
「・・・まぁまぁな拳だったぜ。」
「それは俺の台詞だ・・・」
俺はそう言いながら【悪魔ノ削命】を解除する
幾ら【魔皇帝】とは言え、全能力を物理に振り分けた状態の僕とあそこまで戦えるのだ
間違いなくお兄さんが【魔皇帝】だった時と同じくらいの力を有しているのだろう
「まぁ、なんだ・・・偶には殴り合いにまた付き合え。」
「・・・気が向いたらね。」
僕は筋肉馬鹿が差し出してきた手を握り返しながらそう答えた・・・
◇
筋肉馬鹿に立たせて貰い、立ち上がった僕は【狂笑道化団】の方へ視線を向ける
「約束通り君たちとは此処でお別れだ。」
「・・・うん、約束は守るよ。どうせこの戦いが終われば消える命だ・・・余生を楽しみなよ。」
「かもしれないけどね・・・出来れば君たちとは二度と会いたくはないなぁ。」
「どうせ直ぐに逢えますよぉ。その時はぁ・・・思うがままに嬲って差し上げますねぇ。」
そう言いながら殺気を向けてくる【狂悦】を無視し、【狂炎】・・・いやお姉さんに視線を向ける
「お姉さん・・・お姉さんも薄々気付いているだろうけど・・・さっき言った事は嘘じゃない。」
「・・・・・・」
お姉さんは僕の言葉を聞いてはいる様だけれども視線を全く動かさない
「お姉さんの剣【赤炎】の裏銘は【責怨】だ。これは【狂戒】に聞いた事だから間違いない。」
「・・・黙れ。」
「・・・真銘である【積焉】まで至る事を僕は信じているよ。」
「黙れと言っているっっ!!!」
僕はお姉さんにそう怒鳴られ、そのままお兄さん達の元へは赴かず・・・この古城の出口へと歩を進めていく
「おい餓鬼、お前何処へ行くつもりだっ?!!!」
「・・・ちょっと僕の方でも心の整理が必要で、さ。・・・少し席を外すよ。」
「お前・・・」
筋肉馬鹿の何とも言えない表情を見て、そしてお兄さんの方へ視線を向ける
「・・・・・・」
「・・・・・・」
お兄さんは仮面を付けている為に表情は分からないが・・・何も言わずに微かに頷いたかの様に見えた
そんなお兄さんに少しだけ笑いかけ・・・僕はこの場を後にした
◇
◇
「さて、これで僕らは残り3人となった訳だ。」
「長かったですねぇ~・・・」
「・・・・・・」
当初に予定していた流れとは大幅に狂ってしまったと認めざるを得ない
本来なら此処まで接戦になる事も無くアカノVSクロノという舞台を準備したかったのだが・・・
「相手が強いのかな?それとも味方が弱かったのかな?」
「間違いなく後者でしょう?!まさか人族や下っ端の魔族に此処まで苦戦する無能ばかりだとは思ってもみませんでしたからねぇ。」
「・・・【狂悦】、お前の様な奴が戦っていった者達を愚弄するな。」
「おやおやぁ~?【狂炎】さんは変な事を仰いますねぇ。戦おうが敗北すればそれは無能、弱者、役立たずなのですよぉ?!!」
「貴様っ!!!」
【狂悦】の言葉に【狂炎】は柄に手をかける
僕はその手を押さえつけ、2人を仲裁しながら【狂悦】の方へ視線を向ける
「じゃあ、【狂悦】・・・次戦から君に任せてあの【魔神】を舞台に引っ張って来させることは可能かい?」
「う~~~ん????」
僕の言葉を聞き、【魔神連合】の方へ視線を向ける
そして一通り観察した後に満面の笑みで「余裕でしょぉ」と軽く応えてきた
「じゃあ決定だ。次戦からは【狂悦】、君にお願いするよ。オーダーとしては【魔神】を引っ張ってきてくれ。」
「はいはぃぃ~。ご用命であれば【魔神】さんも屠ってきますよぉ。」
「いや、それは姉さんにお願いしたいからね。」
「成程ですねぇ~。確かにそちらの方が面白いでしょうねぇ・・・では、行って参りますねぇ~。」
僕の注文を受け、【狂悦】は軽い足取りで舞台へ上がっていった
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