ロキフェルと猛攻と本能
ホンの極僅か・・・
本来なら戦いの最中に気を留める事すらないソレは俺に焦燥感を与えてくる
何故なら物理戦であれば最強だと、【真祖】にすら負けないと心底自負している俺からすれば筋肉馬鹿とは言え【魔王】に傷をつけられたという事実がどうしても信じられない
「どうしたっ?!!動きが荒いんじゃねぇか?!!!」
俺の動揺が筋肉馬鹿にも伝わったのか、先ほどまでは口も開かなかったにも拘わらず今このタイミングで挑発をしてくる
「なんだなんだ?早くもスタミナ切れかっ?!悪いが俺はまだまだ止まらねぇぞ!!!」
筋肉馬鹿からすれば俺が何故動揺しているのかまでは理解できていない様だ
その事実が俺をより苛立たせる
「調子に・・・乗るなっっ!!!」
敢えて筋肉馬鹿の一撃を受け止める覚悟で反撃する
だが・・・
「つっっ!!!」
俺の右肩に激痛が走り、それと同時に手にしていた大剣を握る力が弱くなってしまい筋肉馬鹿にまともな一撃を与えることが出来なかった
そして俺の右肩から鮮血が舞い散り、思いのほか深く斬られたという事実を否応なく理解してしまった
「今のは良い一撃だったんじゃねぇか?!!!」
「五月蠅いっ!!!」
痛みに構うことなく、側面部分から真っ二つに斬ろうと襲い掛かる
だが俺の渾身の一撃を大剣で捌きつつそのまま攻撃を仕掛け続けてくる
「どうだ・・・これが剣術だ。」
「剣・・・術?」
「応よ、今の俺とお前には明確なステータス差がある事は俺にも分かっている。だがな、そのステータス差を覆することが出来るのが・・・剣術、つまり経験なんだよ。」
「経験・・・?」
コイツが何を言っているのか理解できない
力あるものは力を、素早さが高いものは素早さを、魔力が高いものは魔法を行使する
それが当然であり必然であった筈だ
「お前は主の父親・・・あの人族の剣士を見て理解出来なかったのか?」
お兄さんの父親・・・確かにあの剣士は強かった
【剣神】どころか【剣聖】でもないあの男は【魔王】を圧倒し続けていた
ステータスだけを比較すればこの場にいた誰よりも低かっただろう剣士は・・・強かった
「俺もある事が切欠となり、剣術ってやつを齧りだしたがな・・・まだまだ我流の剣術しか出来ない俺から見てもありゃあ・・・圧倒的だった。んで同時に希望も感じたよ。」
「・・・希望?」
「あぁ、愚弟と戦っていたお前に勝てるという希望だ、よっっ!!!!」
「っっ?!!!!」
胸部を斜め一閃に斬られる
今の俺は致命傷とまではいかないまでも、圧倒的に押されて手傷を負っている状態だ
対して筋肉馬鹿は此処まで攻撃し続けた事により多少の疲労はあるだろうものの、未だ無傷という、当初の予想を覆わせる形で尚も斬りこんでくる
「おいおいおいっ?!!まさかこのまま俺に敗北するってかぁ?!!」
「・・・・・・」
筋肉馬鹿のスタミナは依然として尽きる事は無い様で、俺に手傷を負わせても猛攻を途切れる事はない
(考えろ・・・考えろ・・・)
このままだと本能のまま戦っても勝機があるとは思えない
ただの【魔王】だと侮るな
その侮りこそが俺を窮地へと誘ったのだ・・・
俺は筋肉馬鹿の猛攻に耐えながら打開策を考え始めた
いつも有難うございます。
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