ダンキの覇気と破棄
「こんな軟弱な攻撃じゃあ、俺には全く効かねぇぞ?」
餓鬼の攻撃にを受け止めて、平然と言い放つ
すると驚いた表情と苦々しい表情を混ぜ込んだ様な、何とも言えない表情を浮かべだした
「・・・嘘だ。」
辛うじて返してきた言葉がたったそれだけとは・・・
俺は内心で嘆息しながら餓鬼に言葉を投げかけ、ゆっくりと近づく
「まぁ嘘でも何でも良いし、お前がそのままで俺と戦うのならばもう何も言わねぇさ。・・・思えば俺はお前に恨みつらみがあって可笑しくない立場だからな、どんな姿であろうがぶっ飛ばす事には変わらねぇがな。」
「っ?!!」
俺がそう告げると幾分か表情が強張る
正直なところ、俺は別に弟の事を恨んじゃいない
正々堂々とした戦いであったし、恨まれる火種を発火させたのは愚弟の方だ
家族であれ何であれ魔族である以上、弱い者が死んだという気持ちの方が圧倒的に強い
マリトナの件も同様だ
餓鬼と女が戦い、餓鬼が勝った
愚弟や女を悼む気持ちが無い訳ではないが、恨みつらみを吐くほどには感じていない
「気に入らねぇのはな・・・」
そう呟きながら眼下にて立ち尽くす餓鬼を睨みつける
俺に睨みつけられた餓鬼は若干の悲壮感を浮かべている様に感じるが、それに構わず拳を振り上げ力任せ餓鬼めがけて振り下ろす
「勝者である筈のお前がいつまでも辛気臭い表情を浮かべてんだっっっ?!!!!!」
ーーーーゴーーーーーーンーーーー
力一杯に振り下ろした拳は餓鬼が発動させた障壁を叩き割りそのまま殴打する
ダメージが軽減されたとはいえ、身体能力が低い今の餓鬼は俺の殴打で容易に吹っ飛んでいった
「餓鬼、お前はいつまで不貞腐れてんだっ?!お前は勝ったんだっ!!誇れっ!!誇る事こそが敗者への手向けだと知れっ!!」
「お前に・・・お前に何が分かるっ?!!」
俺の力任せの一撃により満身創痍の様相を浮かべる餓鬼にそう言い放つと意外にも反論してきた
「私は楽しく生きたかったっ!!面白楽しく生きたかっただけなんだっ!!!誰かを失う事も誰かを失わせることもしたくなんかなかったっ!!!」
「・・・・・・」
「それが魔族の宿命だと諦観したさっ!!でも・・・諦観しきれなかったっ!!!」
「・・・・・・」
「私はただ楽しく生きたいだけなのにっ!!!世界がっ!!敵がっ!!私の運命がそれを許さないっ!!」
「・・・・・・」
「・・・初めてなんだ。」
「・・・・・・」
「何百年も生きてきて、あんなに楽しかったのは初めてなんだっ!!!だから私は・・・私は・・・」
「・・・面白く、楽しく生きるために今を我慢してマリトナを殺り、主の意を叶え様としたってか?」
「・・・・・・」
あぁ、コイツは餓鬼だと思っていたがどうやら俺は思い違いをしていたらしい・・・
コイツは・・・大馬鹿な餓鬼だったんだな
「おい馬鹿餓鬼、1つだけ教えてやる。」
「・・・・・・?」
「今を楽しめない奴が将来面白く笑えるわけねぇだろうが。俺が依然やっていたチンケな戦いじゃねぇ、本当の闘争を楽しむ様に、不利を楽しみ、苦境を楽しみ、理不尽を楽しめ。そうすりゃお前、馬鹿餓鬼の望む世界に自然にたどり着いていくもんなんだ。じゃなきゃその楽しさは本当の楽しさなのか分からなくなるだろうがっ!!」
俺がそう叫ぶと暫しの沈黙が流れる
そして
「・・・ハハッ」
不意に馬鹿餓鬼は渇いた声で笑う
「・・・不利を楽しみ、苦境を楽しみ、理不尽を楽しむ、か。」
「応。」
「じゃあ私は更に不条理を乗せて馬鹿との戦いを楽しむ事にするよ。」
「・・・応。」
俺がそう答えた瞬間、餓鬼の魔力の質が変異していくのを感じだした
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