クロノの生き方と逝き方
「・・・・・・」
僕らは皆、マリトナの亡骸を前に何も言えなくなっていた
ロキフェルが僕を、僕らを裏切っていないと言う
そしてあのやり取りから察するに、僕が姉さんを完全に諦めきれない事が要因だろう・・・
「本当に僕は・・・」
どうしようも無い・・・
自分が完全に諦めきれないが故にロキフェルは汚名をかぶりながらも僕の元を離れ、そしてマリトナは亡くなった
僕が完全に未練を断っていたのならば、少なくともこんな悲劇は起こらなかった筈だ
「主、それ位にしておけ。」
自分で自分に嫌気がさしている僕に対し、ダンキはマリトナから視線を切ることなく口を開く
「・・・俺たち魔族は戦いを求めて戦いに生き、戦いに死ぬ。親しい者が死んでいくなんざ日常茶飯事な出来事だ。今回はコイツの番だった・・・ただそれだけの事だ。」
「でも僕が「それ以上何かを言うのならばそれは2人に対する冒涜だ。」」
ダンキにそう告げられると何も言えない
僕の様に魔族になった奴とは違い、彼らは魔族として生まれ、そして生きてきた
そんな僕が人族以上に苛烈に生きてきた彼らに対し、何かを言ってもそれは僕や人族の常識でしかない
「・・・俺たちは死を哀しまない訳でも死を悼まない訳でもねぇ。ただそれがあるべきモノだと思っているだけの事だ、よっと。」
ダンキはそう言いながら大剣を担いで舞台へ向かう
「・・・ダンキ。」
「だがまぁ、このまま餓鬼を放っておくとアイツが五月蠅ぇだろうから・・・ちっと八倒してきますわ。」
呼び止める僕に対し、振り向くことなくそう答えて歩を進める
その歩調には迷いは一切感じることなく、やるべき事をただやるだけだという強い意志が窺えた・・・
◇
◇
「・・・よぉ。」
「・・・お前か。」
「ご挨拶だな。」
「悪いけれど馬鹿の相手をする気にはなれないんだ。可能であればお兄さんに代わって欲しいんだけどね。」
「そりゃ無理だろ。主は大将だからな・・・やりたきゃ俺とファーニャを倒すしかねぇ。」
「はぁ・・・だよね。」
俺の軽い挨拶に対しそう答えると餓鬼は女の姿のままで俺に対峙してくる
「・・・なんだそりゃ?」
「は?」
俺の疑問に対して餓鬼は意味が分からないという様な表情を浮かべる
その表情を見ると・・・フツフツと怒りが湧きだしてくる
「お前まさか、その身体能力が底辺であるその姿で俺と戦うつもりじゃねぇだろうな?」
そう、コイツが女の姿をしている時の魔力は大したもんだ
だが反面、身体能力に関してはお粗末だというほかはない
「ふんっ、お前なんかこの姿で充分だよ。」
「・・・ったく分かってねぇな。」
コイツの性格上、俺がどんなに言っても理解しないだろうし理解する気もないだろう
だったら・・・女の姿であるコイツを圧倒し、男の姿に変化させる方が早い
俺は頭を切り替え、目の前の【魔王】をどう圧倒させるかを思案しながら大剣を持ち上げた
「・・・準備は良いかな?では、【狂楽ノ道化】VS【戦ノ魔王】・・・始めっ!!!」
「これは避けられないだろっ?!!!」
【真祖】の声が響くと同時に餓鬼は魔力を溜めると同時に複数の魔法弾を射出してくる
1つ1つの魔法弾が上級魔法に匹敵する威力があるであろう攻撃だが・・・
「ぬりぃ!!!!」
「なっ?!!」
そう叫ぶと同時に俺は大剣を一気に振り抜き、複数の魔法弾を斬った
多方向から襲い掛かってくる魔法弾だが、ほぼ同時に俺に着弾する様に仕掛けてきたのだろう
であればタイミングを見計らい、斬れば脅威ですらない
「こんな豆鉄砲じゃ被弾してもどって事はねぇなぁ?」
驚いた様な表情を浮かべる餓鬼に対し、したり顔を浮かべて俺は口を開きそう挑発した
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