ロキフェルの決断と結団
「・・・それまで。」
マリトナを抱きかかえ、暫し呆然としていたであろう私の声に【真祖】の声が聞こえてきた
「・・・あ」
気が付けば私の周りに・・・いや私が抱くマリトナの周りを囲うかの様に見知った人々が立っていた
ダンキ、ファーニャ、ルーシャ、勇者達そして・・・お兄さん
彼らがこんなに近くに立っている事に気づかないとはどれ位放心していたのだろうと内心で苦笑してしまう
「・・・責めないのかい?」
誰も彼もが沈痛な面持ちで無言を貫く
それに我慢が出来ずに思わず自らが口を開いてしまった
「・・・責めるかよ。お前もアイツも譲れねぇもんの為に正々堂々と戦っただけだ。」
「マリトナさんもきっと・・・恨んでなんかいません。」
「お2人が戦った事は悲しいですが・・・それを責めたりはしません。」
皆がポツリポツリと私に告げてくる
その優しい言葉に私はどうしてもいたたまれない気持ちになってしまう
けれどそんな私の気持ちを知ってか知らずか、お兄さんが私の頭に手をやる
「・・・・・・」
「ロキフェル・・・僕らは待っているよ。」
そのまま押し黙ってしまった僕に対し、お兄さんはそうポツリと告げて僕の腕からマリトナを引き寄せて元居た場所へ戻っていく
「・・・お兄さん」
マリトナに背中を押されも尚、傍に駆け寄ることができない私はどれだけ臆病でどれだけ頑固なのかおもい知らされた気分だった・・・
◇
◇
「・・・ふぅ。」
私は背を椅子に預けながら先ほどの戦いを振り返る
愛弟子と言えるほど濃密な時間を過ごしたわけではないが、それでも彼女は私にとって知人程度の枠に収まる存在ではなかった様だ
これまでに何度も味わってきた虚無感が戦いが終わると同時に襲い掛かってきた
「数え切れる事が出来ない程経験してきた事だが・・・やはり慣れるものではないね。」
そんな感想を抱きながら、彼女の方へ視線を向ける
私の視線に気づいていない様に、彼女は仲間たちと話をしている
「・・・君は私に何を求めているんだい?空虚かい?絶望かな?虚無感ならこれ以上に無いくらい味わっているけれどもね。」
「・・・君が私を信仰している事は紛れもない事実だろう。けれど・・・私は君のことが良く分からないよ。知れば知るほど・・・良く分からないんだ。」
届かない私の独白は宙に舞い、そしてまたこの戦いも終焉に近づいているのだと感じるには充分過ぎる雰囲気を醸し出していた・・・
◇
◇
「流石【狂楽】さんですねぇ・・・これまでの有象無象とは格が違いますねぇ~。」
「うん【狂楽】、よくやってくれたよ。」
【狂悦】の賛辞の言葉に続いて僕も彼女をほめたたえる
けれども当の本人はこちらに戻ってきたにも拘わらず俯いたまま言葉を発しない
僕にはよく分からないけれど、自分の部下を自分で殺めてしまった事による罪悪感だろうか?
だが理解できない事に思考を引っ張られ続けるのも良くない
「さて・・・見た所【狂楽】は疲労しているものの致命傷と成り得る傷も負っていない様だし魔力が枯渇間近である風にも見受けられない。僕としてはこのまま次戦もお願いしたいところではあるんだけどどうかな?」
「ですねぇ~!!まぁ【狂楽】さんであれば次戦が誰であろうとも問題ありませんよぉ!」
「・・・止めろ。」
応援している僕たちに対し、【狂楽】は意外にも怒りを抑えこんだかの様な声色で僕らを制止させてくる
戸惑う僕らを無視して【狂楽】はさらに言葉を続ける
「先ず次戦だけど、当然続行して出てやる・・・けれど彼らを侮るな。私たちが相手しているのは【魔王】や【勇者】、そして【魔神】なんだ。どう考えても侮って良い相手じゃないんだ。それと・・・私はこの次の戦いの勝敗がどうあれ此処でお前たちとは縁を切る。」
何故か僕らを蔑む様な視線を浴びせながらそう告げてきた
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