ロキフェルの覚悟と最後
『・・・姫?』
『姫、何を仰っておられるか分かっておられますか?』
「・・・勿論分かっているよ。」
『僭越ながら姫、傷ついたとは言え、我とグレゴリにお任せ頂ければ造作も無く目の前の同胞を誅す事は出来ます。何故姫が御自ら出て行こうとするのでしょう?』
「・・・・・・」
アザゼルの言葉に対して私は何も言えない
彼が言っていることは至極真当な言い分であり、戦いという1点に於いては何よりも正しい
何を言っても私が行う事は感情を優先した愚行であることは間違いないのだから・・・
「ふふっ・・・何を躊躇されているのですか?私なら一押し・・・あとたった一押しで主の勝利が確約されるのですよ?」
「・・・・・・」
『姫、そこな矮小な同胞のいう通りです。』
『そうよな、アザゼル。そこな矮小な同胞がこれ以上謀ろうが、弄しようが、狙おうが、練ろうが・・・です。姫、今でも遅くはありません。たった一言我らに殺れと命じれば良いのです。』
「・・・たった一言。」
『然り。そのたった一言で矮小な同胞の存在を消し、姫に勝利を捧げる事が可能です。』
「そうだな・・・」
そう言って思わず息を吐く
合理的に生きて、合理的に戦い、効率良く勝利を収める
そう考えればたった2文字を口にすれば良いだけであるこの状況はこれ以上にない合理的な状況だろう
(でも・・・)
けれどもやはりと思ってしまう
だからこそ、私自身が本来基軸としてきた生き方に倣う
「それじゃあ、面白くない。アザゼル、グレゴリ・・・ご苦労だった。」
『っっっ!!!!』
『ひ、姫っ?!!』
そして私は彼らの言葉を聞かずに顕現を解除する
多分あちら側でかなり怒っているんだろうな・・・と想像すると思わず苦笑してしまうが・・・
けれど彼らに今この状況を譲るのは違うと思うし、面白くはない
「・・・主?」
そして今の状況を理解できないのか、マリトナは呆けた表情を浮かべてこちらへ視線を向けてくる
その表情を見ると、やっぱり多少の気まずさで苦笑してしまう
「・・・だってさ、面白くないでしょ?」
少しおどけた風に私がそう伝えると呆けた表情のままで何度か瞬きをし、フッと微笑んでくる
「・・・それでこそ主です。」
「だよね~・・・お兄さんの為とは言え、自分を偽るとお兄さんにも罪悪感を与えちゃうだろうからねぇ。」
「えぇ、間違いないかと。」
そう言いながらフラフラと足取り悪くも立ち上がってくる
満身創痍・・・そんな言葉さえ最早可愛らしく感じる
瀕死というよりも半死をも超えているかの様な状態だ
けれどもそんな彼女に対し、私は最大限の警戒を備えて対峙する
「さて主・・・残念ですが私が放てる攻撃は僅か一撃だけとなります。」
「・・・だろうね。」
やはり・・・というよりも一撃でも攻撃を放てるのか?と訝しむ様な様相だ
そこには何の違和感も疑問もない
それよりも・・・
「・・・良いの?」
「・・・えぇ。主の目的を知れました・・・主も取り戻せました・・・満足です。」
それよりも限りなく、確実に訪れるであろう未来だ
私にとってはこれ以上に無い痛苦ではある
けれども自業自得である事も間違いない
「・・・分かった。」
そう呼応して両手に魔力を纏わせる
魔力を形状化し、2本の鎌を携えながらマリトナの攻撃に備える
マリトナはそんな私を嬉しそうに見つめ、そして宙に視線を向けながら何かを呟いている
僅かに目を閉じ、【魔人連合】の皆が待機する場所を眺め、そして・・・何かを呟いていた
「主、お待たせいたしました。」
「・・・待ってない。・・・待っている訳がないじゃないか。」
「・・・そうですか。・・・そうでしょうね。」
そう答えると同時に短剣を両手に構えて一気に魔力を噴出させる
まるで、今この瞬間より先に未練はないとでも言わんばかりの魔力に少しだけ私の決心に鈍りそうになった
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