マリトナの回答と解答
「・・・はぁ。」
私の限りなく確信に近い推測とホンの僅かな希望を混ぜた意見を主にぶつけた反応
それは意外にも溜息そのものだった
『姫が困っておられるぞ?』
『そう言うな、アザゼル。姫としても自分の考えを見透かされやり場が無いのであろうよ。』
「わざわざ指摘してくれて有難う・・・。所でマリトナ、私が此処から方向転換して君を殺すと言ったら、君は信じる?」
「まさか。」
「・・・だよねぇ。」
端的な否定の言葉に裏付けられる私に対する絶対の信頼
生憎、私はその感情を否定する手段は持っていても否定する気は起きない
となると・・・取れる手段は実の所1つしかないのだ
「マリトナ、良いよ。・・・来なよ。」
私が短くそう告げると暫し思案した表情を浮かべた後、嬉しそうに極小のウインドカッターを私に放つ
そしてその瞬間、私の頬に微かな切り傷が掠められ、一筋の血液が垂れて来た
「これで・・・この勝負は私の勝ち、ですね。」
「あぁ、魔法攻撃に関しては・・・だけど間違いなく君の勝ちだよ。」
そう彼女の質問に私が呼応すると嬉しそうな表情を浮かべる
その顔をみて私は再度心の中で嘆息を漏らすのだった・・・
◇
◇
「では主、何故貴方が【魔神】様を裏切られたかをご説明下さい。」
私は高鳴る鼓動を落ち着かせる様に静かに口を開く
すると主は頭を掻きながら何かを思い悩む様な素振りを浮かべる
「う~ん・・・何て言ったら良いかな・・・マリトナ、先ずは前提が間違えているんだ。」
「・・・前提、ですか?」
「うん。私はお兄様を裏切ってなんかいない。寧ろお兄様にとって最善であろう形の為に私は動いている。」
「・・・どういう事でしょうか?」
主の言い方は今一つ要領を得ない
当惑する私を余所に主はそのまま言葉を続ける
「先ずは前提条件としてだけど・・・お兄様にとっての幸福って何だと思う?」
「【魔神】様の幸福・・・」
【魔神】様は一体何を求めているのか?
そう言われてパッと答えられない事を自覚して思わず動揺する
「お兄様はさ、人族に裏切られ魔族となった。じゃあ人族に復讐する事を求めていたかと問われればNOだ。お兄様は人族にグーガを始めとする仲間を殺された事に激怒して人族を滅する事を決めた。そこにはお兄様の願いは、無い。」
「・・・・・・。」
「じゃあ魔族統一を求めているのか?と問われれば答えは勿論NOだ。お兄様は【真祖】の課題を達成する為に侵略を始めた。そんな事だからこそお兄様は無意識に後ろめたさがあったんだろうね、他領に対して差別したり無意味に蹂躙する事は無かった。」
「・・・・・・。」
「じゃあ【狂笑道化団】を壊滅させる事だろうか?・・・やっぱりこれもNOだよね。お兄様は飽くまで目を付けられ迫りくる脅威を振り払っているだけだ。じゃあお兄様の本当の願いは何だと思う?」
「・・・・・・。」
其処まで言われて【魔神】様の過去の言葉を頭の中で反芻する・・・
【魔神】様は基本的に私的な事は言わない
口下手等では決してないけれど、飽くまでも必要な事を言うだけだった
『可能であれば・・・』
不意に【魔神】様が言った一言が頭に過りハッとする
「・・・思い出した?そう、お兄様の願いは大切な人と静かに、そして穏やかに過ごす事・・・ただその1点だけだったんだよ。」
主の言葉を受けて思わず視線を切り、彼女に目を向ける
私の視線を受け、当惑した様な彼女を見て確信する
「【魔神】様はア「そこまでだ。」」
私が答えを告げようとするのを主は制する
(・・・確かに此処で私が答えを口にしても何も好転はしない、か。)
つまり主は、【魔神】様の願いを成就する為に動いている・・・そう言いたいのだと理解した
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