ロキフェルの真意と心意
「『夜王ノ魔衣』っ!!!」
グレゴリとアザゼルの攻撃を吸収し、必死に応戦しているマリトナが目に映る
ハッキリ言って勝負は既に決している様なものだ
早く死ぬか多少遅く死ぬか・・・
其処には死に対する美静観等の介入余地は無い
このままだと足掻いて足掻いて、惨たらしく消えて逝く様なものだ
(なのに・・・)
何故彼女は足掻くのだろう・・・
敗北を受け入れれば良いじゃないか
そうすれば無闇に傷つく事無く命を拾えるじゃないか・・・
「何故・・・何故敗北を受け入れないっ?!!!」
目の前で見苦しく足掻く彼女に思わずそう悪態をついてしまう
「どう考えてもお前の負けじゃないかっ?!!勝負なんてあってないようなものじゃないかっ?!!さっさと敗北を口にすれば良いだけじゃないかっ?!!!簡単だろ?!!ただ負けたと言えば良いだけなんだよっ?!!!」
僕の声は聞こえているだろうが、目の前の猛攻に対し致命傷を負わない様に動き回るマリトナは返事をする余裕すらない様だった
そんな事は私も理解できているのに、尚も言葉を続ける
「彼らは悪魔なんだっ!!悪魔族なんていう【真祖】から産まれた紛い物なんかじゃないっ!!言うなら神から産まれた【真祖】と同列な存在なんだっ!!お前じゃ敵う訳ないんだよっ!!ほら、さっさと敗北を受け入れろよっ!!!」
元部下を卑下する様な言い方は好きじゃない
けれど彼女の心を折る為に敢えて僕はグレゴリとアザゼルは悪魔だと告げる
「・・・ふふっ」
だが僕のその声は意外にもマリトナの失笑で封殺されてしまう
必死に傷を負いながらも致命傷を受けない為に動き回る彼女が失笑する余裕がある訳ない
そう思い直すが、マリトナは再度「フフッ」と声を漏らす
「・・・何が可笑しい?何が可笑しいんだよっ?!!!」
「・・・いえ、私は主に本当に大切にして頂いていたのだと・・・再・・・確認が出来ましたのでっ!!」
飛び回り、跳ねまわりながらマリトナは僕にそう告げる
『この同胞は中々に見どころがあるぞ。』
『そうよのぉ、アザゼル。戯れとは言え我等の攻撃を受けながらも姫の真意に気づくとはな。』
「・・・何を言っているんだよ。正に今、お前を殺そうとしている私がお前を大切に想っている?・・・冗談も大概にしろっ!!」
「いいえ、勿論冗談などでは有りませんよ。主は私を殺さない様に御二方に念を押していたでしょう?『忠義の厚い元部下だ』と。それに『それを踏まえた上で』とも仰っておりましたよね?」
いつの間にかグレゴリとアザゼルも攻撃を一旦止め、マリトナの言葉に聞き入る
「そもそもこの御二方の実力であれば私など一瞬で塵芥になっていても可笑しくないのです。」
「・・・お前を嬲り殺しにする為だよ。」
「であれば尚可笑しいのです。忠義厚かった私を処罰するならば痛みを感じぬ間に殺すか・・・殺す気が無いかのどちらかでしか言葉の真意としては成り立ちませんから。」
「・・・・・・」
「貴方の真意は私を殺す事ではない。主、貴方の真意は貴方の裏切りの理由を諦めさせる事の1点のみで動いておられるのですね?」
『そこらの詳しい事は知らぬが、な。』
『野暮な口は挟むなアザゼル。だがまぁ、そこの同胞の真意は兎も角、確かに我らは矮小な貴様を殺さぬ様、丁寧に攻撃をしていた事自体は事実よ。』
「・・・・・・」
マリトナの言葉にグレゴリとアザゼルも同意する
こうなってくると私の方が圧倒的に不利だ・・・
彼女の性格上、絶対に死なないと把握すれば四肢が捥げても私に直接攻撃を仕掛けて掠り傷を負わせる選択を行うだろう
対して私はマリトナの攻撃を回避しつつ殺さない様に動いて行かなければならない
打開策を見出す事が出来ずに沈黙してしまうのも致し方ないと思えた・・・
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