マリトナの切望と絶望
「僕が詰まらないだって・・・?」
主は私の言葉に無意識的にだろうが声が低くなり怒りの感情を表に出す
「えぇ仰る通り・・・主は詰まらない魔族に成りました。」
内心は恐怖による僅かな焦燥感かあるが、主を挑発するにはこの言葉が一番の特効薬になる事を知っている為にそのまま言葉を続ける
主は元来、面白いモノや楽しいモノに目が無い魔族だ
全ての基軸は『自分が楽しめるのか』
ただその一点に尽きる
そんな主が見ないふりをしているであろう急所を言葉の刃で切り刻む
「主、貴方様からすれば圧倒的弱者である私が無謀にも主に賭けを唆しているのですよ?以前の主であれば興味にそそられ誰が呼応する訳でも真っ先に了承していたのでは有りませんか?」
「・・・・・・」
「お忘れでは無いでしょう?【魔神】様との初対面時に面白そうだからという理由で勝負を嗾けたのは何処のどなた様でしたか?」
「・・・・・・」
「そんな何処のどなた様でしたら、自分と比較して圧倒的弱者である私がどの様な手を使って傷つけようとするのか興味を示される筈です。なのにリスクを重要視する余り面白そうな提案を一考する訳でも無く拒否するとは・・・本当に詰まらない。」
内心では此処まで言うまでに襲い掛かられると考えていたが・・・意外にも主は黙ったまま私の言葉を聞いていた
「ふ、ふふふ・・・ハハハハハハハッ!!!!」
私が言い終わった後、場は暫しの沈黙が訪れるが・・・主の笑い声で以って沈黙はかき消える
「ふふふ・・・マリトナ、良い挑発だったよ。」
「・・・・・・」
「確かに僕は詰まらない魔族に成り下がっていたのかもしれない・・・それは認めよう。」
「では「けれど君の挑発は僕に効きすぎた様だ。」」
そう言ったと同時に主の纏う魔力の質が変異する
それは今までの主からは見た事の無い様な、それこそ【魔神】様が纏う膨大な魔力の質を思い起こされる
「・・・君の挑発には乗ろう。でも、ここからはもう悪戯じゃない・・・正真正銘の戦いだ。」
「っ?!!!」
そう言ったと同時に主の周りに漂っていた魔力が、主自身に纏わりつく
そしてそれと同時に急激な魔力の上昇を感じ・・・1つの感情が脳裏に浮かび上がる
「ふぅ・・・まさか君に僕の最大の切り札を見せる事になるとは想像もしていなかったよ。」
「あ・・・あ・・・」
魔力が霧散すると同時に現れた女性・・・
魔力の量、姿形は似ても似つかない様相だとしても私には理解できる
目の前で対峙する圧倒的な存在は主なのだと・・・
そして姿形を視認してより一層浮かび上がる感情、『絶望』・・・
並みの【魔王】であるなら例え称号の差があろうとも勝利できる自信がある
(けれどあれは・・・)
並みと言う範疇を優に超え、【魔神】様にすら匹敵すると錯覚しても仕方がない存在として立ちはだかっている
「動揺している所悪いけれど、固有スキルで僕の生で一番強いであろう姿に変質させてもらったよ。だから、さ。」
『おぉ、お早いお呼びで、姫。』
『然り。前回から幾ばくも無い期間で再度お呼びたて頂けるとは・・・恐悦至極。』
主が特段魔力を込める訳でも無く、ただ左手を前に翳す・・・
ただそれだけで桁違いの魔力を包括しているであろう悪魔が2体顕現された
「あ、ははは・・・」
思わず渇いた様な笑い声を発した私を誰も責める事は出来ないだろう
その声を聞き、顕現された悪魔は私の方へ視線を向ける
『ほう、今回は同族ですかな?』
『分かり切った事を宣うな、アザゼル。だが・・・ほう、我らの同胞にしては短き刻を生きているであろうにも拘らず中々の実力者よのぉ。』
「アザゼル、グリゴリ。彼女は僕の元部下でね・・・少しばかりお仕置きが必要なんだ。」
その言葉を聞いた2体の悪魔は愉悦の感情を浮かべていた
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