ロキフェルの得意な特異
「くっ!!!」
目の前で元部下が刃を携えて僕に危害を加えようとする
けれど彼女は背後からのダメージが思ったよりも深刻だったのか、先程よりも精彩が無い
「マリトナ・・・君は相変わらず防御力が無いんだね。」
彼女の攻撃を回避しながら僕はそう軽口を叩く
だがまぁ・・・彼女が手負いだからこそ出来る芸当であり、これでも必死に回避に専念しているという事は此処だけの話だ
だから僕が出来る事と言えば・・・
「なっ?!!!」
「はい、側面ががら空きだよ。」
「っ!!!!」
マリトナの攻撃と攻撃の隙間に生じるラグを利用し、事もなげに反撃していますよという体を取るくらいだ
そんな僕の攻撃に驚愕の表情を浮かべながら回避しようとする彼女を見るのは存外愉快だった
(フフフ・・・これでさっき僕を怒らせようとした事は忘れてあげようかな。)
僕の元部下は魔族の割には頭が良い
いや魔族とては破格に頭が良すぎるのだ・・・
上に立つモノとしては少しばかり抜けている方が使いやすいのだが、僕としては有能過ぎる彼女を使った方が面白そうという好奇心に負けて側近に置いたという愚かな経緯がある
「確かに君のお陰で楽も出来たけど、ねっ!!!」
そう言いながら彼女に向けて斬撃を繰り出すが、それも斬撃を与える直前で回避される
「はぁ~・・・僕の腕が悪いのか、君が強いのかどっちだろうね?」
「・・・恐れながら主、それに関しましてはどちらもだと愚考いたします。」
「・・・君も言うね。」
彼女の皮肉に対して、僕も軽くいなしながら目の前の元部下の評価を再度改める
(物理攻撃:S+、素早さ:SS、防御力:A-ってところかな・・・)
対して僕の今の姿での自己診断は物理攻撃:A、素早さ:S、防御力:A+って所だ
彼女が繰り出す手数の多さと手負いの状態に助けられているから今でも平然としているだけで、何の枷も無い状態だったら倒れていても可笑しくはないだろう
「さて・・・君の近接戦での実力は大分把握したよ。じゃあ次は、魔法でやってみたいんだけど、どうかな?」
「・・・それはそれで結構です。ですが主・・・明らかに私の気を逸らそうとしていらっしゃいますよね?」
「・・・・・・」
そう言って僕を睨みつけて来る姿を見ると、どうしても目を逸らしてしまう
「やはりYESですか・・・」
そりゃそうだ
僕としてはマリトナに僕の思惑を突き付けて欲しくない
だったらこちらのペースで不可能な僕を止めるという幻想に縋って貰った方が都合が良い
にも拘らず、此処でまた厄介な事に僕の本心を探ろうとしてくる彼女にはいら立ちが募ってしまう
「では主、こうしましょう。主の得意な魔法で私が僅かでも傷をつける事が出来たのなら、私の質問に1つ答えてください。」
「断る。」
そんな彼女の提案は考える間もなく否決だ
メリットが無く、デメリットしか存在しない様な提案を誰が呑むと言うのか・・・
「まぁ、最後までお聞きください。その代わり主が私に僅かでも傷をつける事が出来れば・・・私は今後主の心を読みません。」
「勿論断る。」
その程度のメリットを提示されたくらいで動く様な僕じゃない
けれどマリトナなからすると意外だったのか、肩を竦める様な挙動を行って、そして嘲る様に口を開く
「はぁ・・・この程度のリスクを拒否するなんて・・・貴方は本当に詰まらない魔族に成りましたね?」
「・・・何だって?」
その一言は僕には聞き流す事が出来なかった・・・
いつも有難う御座います!!
「面白い&期待している」という方は★&ブックマークを是非ともお願い致します!!
ご感想やレビューも心よりお待ちしております!!