イファンの動揺と困揺
「なっ?!!」
私は目の前で行われている光景に驚きを隠せずに思わず声を上げてしまう
駒である【魔の勇者】が聖属性最強魔法と言われる『神ノ兵』相手に近接戦で渡り合っていたのだ
それだけならば未だしも・・・あろう事か、魔力を殆ど練り上げずに『神ノ兵』に対し魔法を放った上に少なくないダメージを与えたのだ
(『神ノ兵』は近接戦を得意とする【勇者】にすら引けを取らない強さを誇るのに・・・それすら圧倒する力を持っているというのですか?!!)
どうやら私は目の前の駒を未だ過小評価していたと認識し、評価を改めざるを得ない様だ
けれどそう思い直した刹那、『神ノ兵』に向けて再度無詠唱でアイスエッジが降り注がれる
『・・・・・・』
なんとかアイスエッジのダメージを最低限に抑えた様だが、このままだと『神ノ兵』が消えていくのは時間の問題だ
(不味い不味い不味い不味い不味い!!!!)
そもそも聖属性自体は光属性の中でもかなり特異な存在だ
適性があれば発動できる光属性に対し、【聖女】の様に決まった称号を得ていないと習得できないのが聖属性だ
発動される魔法から光属性の中に組み込まれはするが厳密にいえば光属性ですらない
そんな特異で希少な属性を得ている私が複合属性持ちとはいえ普通の魔法しか操れない者に魔法で敗北する事は許されない事だ
そんな私の葛藤を余所に、駒と『神ノ兵』が魔法と斬撃でもって中距離での撃ち合いを行っている
(糞糞糞糞糞っ!!!何が神ノ兵よっ!!!人族の【勇者】1人満足に倒せない兵士なんて無能も良い所じゃないっ!!)
あんな役立たずを顕現させる為にどれ程の魔力を消費したと思っているのだ!!
そう思うと苛立ちと憤怒で頭の中がゴチャゴチャになってくる
あの時に使用した魔力があれば他の手段も講じる事が出来た筈だっ!!
そもそもあの御方の尖兵ですらないのに魔法銘が『神ノ兵』というのも納得出来ていないのだ
ーーーゴォウゥゥーーンーーー
憤っていたその瞬間、炎に包まれた岩石が『神ノ兵』の左腕に直撃し、左腕が吹き飛ばされる
「なにやってんだぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!」
その光景を見た私はあの御方に見られている恥ずかしさと思い通りにいかないもどかしさに思わずそう叫んでしまった
◇
◇
(えぇぇぇ・・・)
【聖女】の変貌ぶりに思わず引いてしまう・・・
私の初級魔法を複合させた魔法、ファイアロックを受けた『神ノ兵』に対して外聞もなくキレている
あれだけ集中力を切らしていれば追撃の心配は今の所は無いと思って良いだろう
(それにしても・・・)
恐るべきは『神ノ兵』だろう・・・
私の攻撃で左腕が捥げたにも拘らず叫び声1つあげることなく淡々と私に対して迎撃してくる
神ノ兵を名乗るモノは痛覚はないのだろうか?と疑問を呈してしまう程に最適解の攻撃を繰り返してくる
だが最早片腕しかない神ノ兵は私の敵には成り得ない
後はこの中距離を維持しつつ【聖女】の動きを監視していけば勝負は決するだろう
そう予想して私は左腕だけで神ノ兵を相手取り、右腕に魔力を込める
(多分、次の攻防でしのぎ切られれば・・・魔力不足で私の負けかもね。)
目の前の神ノ兵に敗れる事は最早有り得ないがそのまま【聖女】に勝利するまで魔力が保つかと問われれば話は別だ
一刻も早く目の前の敵を退けなければ勝機は無いと、僅かでは有るが焦燥感に苛まれた
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