ロザンワの失態と失敗
「流石はあの御方に選ばれし駒ですね。」
先程まで感情を露わにしていた表情は消え去り、余裕を持った表情を取り繕う
特定の人物以外に余り人に興味がない私でも容易に理解できるその表情を見て、私は虚勢とはとらない
(何かを狙ってるの・・・?)
「貴女の仰る通り【神ノ盾】は完全な球体ではありませんわ。でも、それでもこの世界で最強の防御スキルを兼ね備えているという事実は覆りませわね。」
【聖女】は訝しんだ私を無視したかの様に己のスキルである【神ノ盾】の穴をツラツラと話始める
私はその態度に強烈な違和感を抱く
(長々と話す事に何か理由があるの?回復・・・いえ、時間稼ぎ?!)
彼女は何かを狙っている
戦っている以上それは当然では有るが、ただでさえ厄介なスキルを保持している【聖女】の思惑に乗るとは得策ではないと本能が告げる
それ故に何をしようと企てているか分からない以上、自ら動いてペースを崩す必要があると考えて彼女の足元にアースニードルを発動させる
「やっぱり駄目ね・・・」
「フフフ・・・何を焦っていらっしゃるのかしら?」
当初の見立てに相違が無いか地中からの攻撃を試みてみる
だが・・・結果は悪い意味で予想通り
地中の方にも【神ノ盾】は発動されており攻撃は欠片も通らない
(なら・・・)
闇魔法であるマジックバインドを発動させ、僅かな時間であるが状態異常を付与させようと試みてみる
だがそれも何の意味もない様で手応えを感じられない
(失敗?それともあの中にいれば状態異常すら盾で跳ねのけられる?)
単純な失敗であれば再度試みてみるのも良いがそうで無いのならただでさえ魔力の消費量が高い闇魔法を連発するのは得策ではない
(追尾性のある魔法はあっても何処に当てるか指定出来る程の魔法は今は無い・・・そうなってくると打開策としては気付かれない様に背後に回り被弾させるか【神ノ盾】を割る程の超高火力の魔法を撃ち込むかのどちらかですが・・・)
自分で考えながら思わず苦笑する
私を凝視する【聖女】から気付かれない様に背後へ回り込む事は自分の身体能力上不可能だ
それに【神ノ盾】を割る程の魔法となれば禁呪ですら可能か不確かだ
(まぁそれでもやるしかないですが・・・)
そう自嘲しながらも禁呪を発動するべく魔力を練り上げる
だがそれら全ては悪手の連続だったと直ぐ後に身を以って実感すてしまう
「あらあらあら・・・幾ら【魔の勇者】様であったとしても今更その様な膨大な魔力を必要とする魔法を練り上げるまでに私が先んじてしまいますよ?」
そう言った【聖女】の表情は【狂信】と呼ばれるに相応しい貌をしていた
「・・・くっ!!!」
「流石にもう遅いです・・・『神ノ兵』」
彼女が魔法を発動した瞬間、天上から光が射しこみ、1体の何かが顕現された
身体はダンキ殿よりも大きく、全身を重厚な鎧兜に身を包み顔すら見えない
背には翼が生えており一翼は天使族の様な鳥の羽、もう一翼は悪魔族の様な蝙蝠の羽の様だった
右手には明らかに業物であろう剣を携え、左手にはバックラーの様な大きさではあるがこれまた業物の様な盾を携えた白銀の騎士とも揶揄されそうな兵士だった
「これは・・・」
「フー・・・フー・・・思ったよりも魔力は消費しましたが、これが私の奥の手ですわ。」
目前に立ち塞がる騎士に圧倒されている私に対して【聖女】は【狂信】である色を濃く浮かべた表情で勝ち誇りながら囀る
(確かにこれは奥の手と言われても納得できるわね・・・)
目の前の騎士は強者、それは見ただけで本能がそう告げる程だ
にも拘らずその騎士からは感情が一切漏れ出ない
強者特融の自信も驕りも、私に対する警戒や侮り等の感情も感じない
『ただ其処に在る』
ただその様な感情しか湧かない強者が其処に立っていた
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