アカノの乖離と理解
「それまで・・・だね。」
「おじちゃーーーーーーーーーん!!!!」
私の声とカラミトルの絶叫が重なり合う
その瞬間、クロノ君たちは舞台に上がっていく
だが・・・残念ながら彼は最早こと切れているだろう
「先程の勝負は如何でしたでしょうか?」
「うん・・・悪くは無かったね。まぁ一言で表すならば勝者無き勝負と言った所かな?」
傍らで問いかけて来た声に特に抑揚も無くそう答える
勝者無き勝負・・・自分で言っておいて何だが、的を射ているだろう
【狂戒】は勝利したものの命を失い、カラミトルは生き延びたが勝利と生きる指標を失った
(だがまぁ・・・)
敗者無き勝負・・・そうとも受け取る事は出来るだろう
カラミトルは生きる指標を失ったものの生きながらえた
それは新たな指標を構築できるチャンスを得たという事だ
【狂戒】の死に顔は何処か満ち足りた表情をしているのだから命を失ったものの・・・本人からすれば良い最期だったのだろう
(私もあの様な表情を浮かべながら逝きたいものだね)
何処か羨望に近い感情が湧き出てそう思わずにはいられなかった
◇
◇
「さて・・・勝利はしたものの【狂戒】は死に、相変わらず振り出しのままだね。」
「全く・・・アレは生きてても死んでても役には立ってくれませんでしたねぇ」
「っ?!!【狂悦】、死人にその様な侮辱的な事を言うなっっ!!!」
【狂悦】の言葉に思わずそう噛みつくが、私の言葉を受けた当の本人は微塵も表情を変えない
「何故ですぅ?生きていれば裏切り行為を行い、死んでもコチラに恩恵を与えないのですから、実際に役には立っていないでしょうぅ?」
「貴様っっ!!!!」
「そこまでだよ。」
思わず剣を握りしめて斬りかかろうとするもののクロノの言葉で制止する
「【狂悦】の言おうとする事も理解できない訳じゃないけれど、それよりは次は誰が出るかを決めようか。・・・ハッキリ言ってもういないアレの事を口にするのも時間の無駄でしょ?」
「ですねぇ~失礼しました。」
クロノと【狂悦】のやり取りを聞き絶句してしまう
私はクロノが【狂悦】を諫めると思っていた・・・
でもそんな事は無く、寧ろ無関心であるかの様に振舞う
そして私が何よりもショックなのが・・・他のメンバー達もクロノの同様に声を荒げる事も無く次の話題に移行している事だった
「は・・・ははっ・・・」
思わず諦観故か乾いた笑い声が口から零れる
一体私は・・・彼らと何がしたかったのだろう
私とクロノだけの世界を創る・・・そう信じて今までやってきた
けれど今のクロノと2人だけの世界で生きていきたいとは思わない
そして・・・彼らと共に生きていきたいとも思わない
考えれば考える程に自分が此処に立っている意義を見出せなくなりそうになる
(だがせめて・・・)
クロノを止めなければならない
私の知っているクロノはもういないが彼がこれ以上汚れていく様を見たいとも思わない
私が出来る事と言えばせめて【魔神連合】がら1度だけ勝利を得てクロノを【狂笑道化団】から離脱させる事だけだ・・・
変わってしまったとは言っても愛しいと思っていた彼に死んでほしいとも思わない
だったら私は1度だけ勝利し、クロノとの賭けに勝つ・・・それだけを目標にして臨んでいく事に決めた
「・・・じゃあそう言う訳で次は頼むね。」
私が思い馳せていた間に次に出る者が決まったみたいだ
彼らの方へ視線を向けると・・・静かに微笑んでいる彼女が見える
「えぇ、お任せください。全ては我が神の名の下に悪しき者を屠って参りましょう。」
そう言って彼女は舞台に向かって歩いていく
【聖女】の称号を得ている人族で最も権威のある存在、【狂信】イファン=ロードベルその人だった・・・
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