カラミトルの原点と源典
『誰かを傷つける事で自分が傷つく事を怖がっている』
私はおじちゃんのその言葉に驚くほど納得出来た
私は本当は戦くなんか・・・無い
パパやピピやベベ、アカノンやクロノン、ロザンワっち・・・人族だけじゃなくて魔族や龍族の皆とも仲良くしたい
皆で笑って幸せに生きていきたい
でも・・・この世界は私の願いに優しくはない
産まれた時は神獣の住まう森の奥深くに捨てられていた
笑顔で包み込み、笑顔に包み込まれたい私は・・・誰かに忌み嫌われ誰かにを笑顔に出来なかったのだろう
パパとピピに育てて貰って初めて人族の村に行った時はパパとピピと私を見て、村の皆は驚き、そして絶望していた
多分私たちが村を襲うと勘違いしたのだと思う
私と人族の邂逅は村の人の絶望と私の戸惑いの感情だけが溢れ出て・・・やはり笑顔で包み込むことも包まれる事も無かった・・・
森で行き倒れになっていた神父さんを助けると、お礼にと私の称号を見てくれた
すると私の称号は【勇者】・・・それを見た神父さんは笑顔を見せてくれた
ただ・・・今思えば打算めいた様な醜悪な笑顔を、だ
神父さんに連れられてパパとピピと共にある国に向かう
気が付けば私の周りには醜悪な笑顔が周りを包み込んでいた
私は良く分からないけれど、口々に私が如何に重要な存在であるかを笑みを浮かべて滔々と語る人族で溢れかえり、私は国の【勇者】として表舞台で踊らされる
そこからは殆ど地獄だった
命がけで戦った私たちに向けられるのは畏怖の感情と打算的な笑顔だけ・・・
私はそんな感情以外受けた事が無いから、人族って言うのはこんな人たちなんだと納得していた
でも・・・
『君がカラミトルかい?』
『・・・?』
『今回の指名依頼で一緒に行動する事になったアカノ=エンドロールだ。・・・宜しくね。』
そんな私がそれ以外の感情を始めて向けられる
『カラミトル・・・君の攻撃力と素早さは世界でも指折りの実力だな。』
『・・・君は食事に対して無頓着過ぎないか?』
『アカノン・・・私の事か?ハハッ、まぁ良いだろう。』
『私は目の前のデカ物を叩く!!だから・・・背中は任せるっ!!』
アカノン・・・いやアカノ=エンドロールと出逢って私は初めて本当の笑顔と言うモノを体感した
温かくて、ぽわぽわして、幸せを感じて・・・
私が笑えば彼女も笑う・・・私と彼女が笑えば周りも笑ってくれる
畏怖や恐怖の感情を向けられる事が無くなった訳じゃないけれど・・・それでも今まで向けられる事が無かった感情に私の心は満たされる
そしてそこから私の願いは完全に定まった
『この世界を笑顔で満ち足りた平和な世界にしよう』
こんな気持ちは誰もが向けたいに決まっているし向けられたいに決まっている
幸いにも私は【勇者】だからその力はある
それにパパとピピも居るのだから出来ない筈が無いんだ
そう思っていたのに・・・
「・・・ぐぶっ!!!」
「・・・・・・」
私の左肩から血が滴り落ちる
これは恐怖からなのか・・・身体全体に震えが走る
「・・・ふん・・・やりゃ・・・出来るじゃねぇ・・・か」
そう言ったおじちゃんの左胸には私の拳が深く突き刺さっている
「おじ・・・ちゃ・・・」
「おい・・・んな顔・・・するな。・・・お前・・・の・・・ねが・・・いと・・・俺の・・・願い・・・は・・・相容れなか・・・ただけ・・・だ。」
おじちゃんはそう言って片膝を付く
最早戦う気力もないのだろう
先程の殺気は完全に霧散していた
「こ・・・の世界・・・は・・・優しくなん・・・ざ・・・ねぇ・・・。だが・・・だから・・・こそ・・・お前・・・は・・・折れるな・・・よ。」
「おじちゃん喋らないでっ!!!」
息も絶え絶えにそう呟くおじちゃんに対して近づこうとするも、私の身体も思うようには動かなかった
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