ポセイランの狂謀と狂暴
「・・・【英雄】?」
「はい、彼女の称号は最早【勇者】では無く【英雄】です。」
「・・・聞いた事が無い。」
【勇者】とは人族固有の称号という認識はあったけれど、称号が変化した事なんて聞いた事が無い
それが人族の寿命の短さ故なのか
「彼女ほど他者を労わる事が出来る【勇者】が現れなかったからでしょうね・・・」
僕の思考を先回りしてロザンワが代弁してくる
つまり彼女が言う、【勇者】で有りながら【英雄】にまでいきつけなかった理由は有史以来【勇者】自身が驕り続けていたから故という事になる
「カラミトル程ではないにしても、他者を労わる【勇者】は存在していたでしょう・・・。けれども彼女ほどに全ての存在を大切に想っていた存在は居なかったのでしょうね。そしてそんな彼女が怒っているんです・・・再度断言しますが、彼女が敗北する事は有り得ません。」
ロザンワにそう言われて視線をカラミトルの方へ向けて行った
◇
◇
「グッ・・・グバッッ!!!」
口から大量の血液が溢れ出してくる
たった一撃を受けただけなのにも拘らず身体中の全てが軋む様な感覚に襲われてしまう
「この・・・餓鬼ぃぃぃ!!!!」
子供の様な風貌をした人族の女の目の前で倒れ込み、尻餅をついた自分を誤魔化す様に反撃を試みる
だが・・・俺様の連撃をいとも容易く回避して反撃もせずに俺様を見つめて来た
(なんだこの餓鬼・・・なんなんだ・・・この餓鬼はっ?!!)
「俺様は・・・今の俺様は【狂暴】だぞっ?!!!そんな俺様の攻撃が・・・何故当たらねぇっ?!!」
俺様の最狂のスキル、【心暴淵虜】は触れたモノの体内に魔力を送り込んで体内にある液体を暴走させる
どの様な生物でも液体が体内に入っていない存在等は居ない
それ故に多少の時間が掛かろうが、触れた瞬間に俺様の勝利がほぼ確定するのだ
(確定・・・するのに・・・)
だが目の前の餓鬼に対して・・・俺様の攻撃は触れる所か掠る事すら出来ない
それどころか、俺様の挙動を見て観察している節すらある
「・・・ねぇ。」
腸煮えくりかえりながらも、相手に触れる事に集中していた俺様に人族の小娘は声掛けて来る
「もしかしてだけど・・・それが本気?」
「ぐっ!!!んな訳がねええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーー!!!!」
そう叫びながら攻撃速度のギアを一段上げたにも拘らず・・・目の前の餓鬼にはやはり触れられない
素早く、攻撃的に、フェイントも居れ、意外な角度からも攻撃を仕掛けた
だが・・・その全てが通じない
「何故だ?!!てめぇの様な人族の餓鬼に何故俺様の攻撃が当たらないっ?!!!!」
「・・・・・・私怒ってるんだ。」
「・・・それがどうしたっ?!!!」
「あのおっちゃんはね・・・大事な友達のおっちゃんだったんだ。」
「だから何だっ?!!!此処はそう言う場所だっ!!強い者が生き、弱い者が死ぬっ!!!」
「うんそうだね・・・私はそれも納得いってないけれど。・・・貴方はそんなおっちゃんに対して生贄として罪も無い魔族を殺させたんだよ?」
「それがどおしたってんだっ?!!!利用できる者は利用して、利用できない者は無造作に散らせるっ!!!それが魔族であり、自然の摂理だっ!!!獣と一緒だっ!!!この世は弱肉強食なんだよっ!!!」
ーーーードゴォォーーーーーーーーーーーーーーンーーーー
「ガハアァァァーーーー!!!!」
そう俺様が叫んだ瞬間、身体が弾かれたかの様に吹っ飛ばされる
「・・・獣と一緒?獣を馬鹿にしないでくれるかな。」
「ガアァァァァァ!!!!」
そう言うと同時に腹部に激しい拳撃を繰り出される
俺様の言葉に怒り狂っている様であるとは推測できるものの・・・何に怒っているのかは理解出来ない
(だがこれで・・・)
拳撃を受けたと同時にこの餓鬼の腕に触れる事に成功した
これで俺様の勝利は大幅に近づいたと内心ほくそ笑んだ
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