アカノの心中と心証
「・・・【狂戒】、言いたい事は分かるよね?」
「魔力の伝導率の質、斬れ味、存在感、格・・・あれらはこれまでの武器とは一線を画す代物ですねぇ。」
「あぁ、確かにアレは俺が創った最高傑作だ。」
【狂乱】達に問い詰められるまでもなく、【狂戒】はあっさりと認める
そんなにあっさり認めても良いのだろうか?とも思うが当の本人は何も思っていないかの様な風体だ
「やれやれ・・・これだから人族は愚かですね。あの武器が相手の手に渡った事がどれ程の脅威なのかを理解できていないとでも?」
「いんや、理解はしている。だが俺はこの組織に属してはいるが、それ以前に鍛冶師だ。最高の武器に相応しい者にそれを渡したいと思うのは鍛冶師として吟事だ。」
「・・・【狂戒】、これは契約違反じゃないかな?」
「何処がだ?俺はお前さんとした契約は『最高の武器を創る』という一文のみだ。お前さん達に渡すという事までは言及してねぇ。・・・まぁアイツと再会しなければお前さん達に渡しただろうが・・・そうはならなかったというだけだ。」
「屁理屈を・・・」
何処までも飄々としながらも後悔の念など欠片も浮かべない彼に、私以外の皆は苛立った表情を浮かべる
そして、散っていった【狂滅】の事など誰一人何も言及しない事がこの組織の強みでもあり弱みでもあると嫌でも実感してしまう
幾ら言っても埒が明かないと諦めたのか、【狂乱】は露骨に話題を転換させていく
「まぁ、この戦いが終われば【狂戒】には罰をあたえるとして・・・次戦は誰がやろっか?」
「もう【狂戒】さんで良いのでは無いですかぁ?」
「いえ、それは愚策でしょう。コレが出れば戦わずして敗北を宣言する可能性があります。」
【狂悦】の提案に【狂謀】は即座に否定する
だがそれはどの場面で戦っても同じことが言えるが・・・
私がそう考えると【狂乱】も私と同じことを考えていたらしい
「う~ん・・・それに関してはどのタイミングでも言える事でもあるけれどね。それに自分の創った武器で斬られるのも、自分で創った最高傑作の武器を無力化して勝って来るのも面白いよね。」
【狂乱】はそう言いながら暗に【狂戒】を次戦に導入するかの様な口ぶりで告げていく
その言葉を聞いても当の本人はどこ吹く風という様な表情を浮かべており、この強靭な神経は何で出来ているのだろうと他人事ながら感心してしまった
「【狂乱】・・・待ってください。次戦はこちらにとってもあちらにとっても、ある意味では節目になり得る戦いです。そんな場に裏切り者を導入するのは如何かと。」
そう言って【狂謀】はクロノの意図を察しながらやんわりと止める
確かに初戦は【狂滅】が辛勝したが、二戦目では一太刀も与える事無く敗北した
そう言う意味では振り出しに戻ったとも言える状況だと言うのは理解出来ない訳では無い
「・・・まぁ君が言わんとする事は理解できるよ。じゃあ誰が行く?」
「私が行きましょう。」
理解の表情を浮かべて質問を返す【狂乱】に対して【狂謀】はすぐさま答える
そしてその表情には自信が浮かび上がっていた
「・・・へぇ、君が自ら行こうとするなんて珍しいね。」
「えぇ、今回の戦いは私の得意分野になりそうですから。伊達や酔狂で【魔王】は務まりません。」
「【魔王】の汚名は【魔王】が注ぐって事かな?・・・分かった、じゃあ次戦は【狂謀】に任せるよ。僕はあの御方の元に戻るから・・・頑張ってね。」
そう言いのこし【狂乱】は【真祖】の方へ向かっていく
「ふふ、では行ってまいります。・・・あぁ【狂炎】さん、貴方の父君がどうなろうと私を恨まないで下さいね?」
「・・・・・・私のではなく私達の、だ。恨みに関しては・・・尽力しよう。」
私がそう答えると、意味深な表情で口角を上げて戦いの場に向かって行った
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