クロノとクロノの驚愕
「クロノ、彼女はどうだ?」
「・・・傷そのものは喰ったから命に別状は無いと思う。でも血を流し過ぎてるから予断は許されないけれど。それより・・・」
そう言って目の前の男、【剣豪】で有り、僕たちの父でもあるカノン=エンドロールの方へ視線を移す
ルナエラから父さんは死んだだろうと聞かされていたから・・・生きていてくれたことは純粋に嬉しい
けれど同時に疑問も出て来る
「ルナエラから父さんは死んだだろうと聞かされていたから・・・生きていたのは嬉しいよ。でも・・・だったらどうして人族領に戻らなかったの?」
「そうだな・・・重傷を負って死の淵に立っていたのは事実だ。だが顔見知り程度の人物ではあったがソイツに助けられてな。万全では無いが・・・まぁ多少は力になれるだろう。」
そう言いながら【狂笑道化団】の集まっている方へ視線を向ける
そしてその言葉をそのまま受け取るならば・・・父さんは僕等の方に付き、姉さんと戦う意志を孕んでいた
◇
◇
「・・・父さんが・・・生きて・・・いた?」
あの立ち居振る舞い、【狂滅】を眼前にしても一切動揺しない肝の座り方は父さん以外では有り得ない
父さんは私の目の前で剣で貫かれていた・・・それは覆る事の無い事実の筈だ
ゴーガンへと無意識的に視線を向ける
「【狂戒】・・・説明出来るよね?」
そして私が視線を向けると同時に、クロノも含めた全員の視線が【狂戒】に注がれる
だが・・・意外にも当人は全員の視線を受けているにも拘らず委縮する事無く口を開く
「あぁ、説明は簡単だ。俺が奴に刺した剣の表銘は【禍死】、裏銘は【仮死】だ。俺はアイツを裏銘で刺したってだけだ。」
「・・・何故?」
「俺とアイツはまぁ顔見知りでな。顔見知りが実の娘を斬るっていう胸糞悪い事が許せなかったってだけだ。・・・で、アイツも偏屈な所があるから冷静になるまで時間を稼いだって寸法よ。」
「・・・【狂戒】さぁん?それが許されるとは思ってませんよねぇ?」
「応よ、勿論許されるとは思っちゃいねぇ。煮るなり焼くなり好きにすりゃ良い。」
ゴーガンがそう言った瞬間、【狂謀】が距離を詰めて襲い掛かろうとする
「・・・何の真似ですか?」
「今此処で【狂戒】を殺す事は単純な戦力ダウンに繋がるぞ?」
【狂謀】の一撃を受け止めて私はそう答える
そしてクロノの方へ視線を向けて口を開く
「・・・【狂乱】、確かに【狂戒】のした事は裏切り行為だ。けれど・・・単純に父さんが生きていてお前も嬉しくない訳じゃないだろう?」
「・・・・・・」
「父さんの言動から、あっちの陣営に父さんが加わる事は間違い無い。戦力が確実に上がる相手に対し、こちらの戦力を下げるメリットなんてないっ!!」
「・・・うん。」
クロノは目を閉じ、数瞬の間思考した後に目を開いてにこやかに【狂戒】へと視線を向ける
その笑顔は・・・裏を孕んでいない様な純粋な笑顔であり、それがより私の心をさざめかせる
「うん、良いよ。姉さんの言った通り、父さんはあちらに付くだろうしね。要は今此処で奴等を含めて父さんも居なくなれば何の問題も無い。」
「・・・っ!!」
父さんが生きていた事による喜びを一切感じない言葉で告げるクロノに対して衝撃を覚える
だがそんな私を無視して場の会話は続いていく
「やはりあちらに付きますよねぇ?」
「うん間違いない、元々1人少ない数を招待していたのが仇になったね。で、【狂滅】?」
「・・・我は退かんぞ。」
「だよね?僕も君がどんなに不利になったとしても、敗けは宣言しないよ?」
クロノがそう言うと何も言わずに頷く
一戦目で此処までボロボロになっている【狂滅】が最後まで勝ち続ける事が出来るとは私は到底思えない
けれども彼の決意は固そうだった・・・
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