サンドラの暗殺と観察
「・・・これで良かったよね。」
身を翻して仲間たちが待つ場所へ戻る中、傍に居ない2人に対してそう呟く
バルデインは甘いと言いながらもそんな姫を誇りに思いますと続けて言ってくれるだろう
グーガは私らしいと言って大笑いしてしまうのではないだろうか?
アレは愚かだ
愚かだが・・・アレの血で手が穢れるのは嫌だ
バルデインを殺した事は今後も許せないだろう
だがアレを殺して仇を討った所で彼は喜んでくれないだろう
もしアレを殺したならば、『お強くなりましたな』と言って・・・少し哀しそうな表情をするのは容易に想像できる
それにアレに私に敗北した屈辱を舐めながら生きるかもしれないと思えば悪くはない
うん・・・前を向いて行こう
そう自分に言って、皆の方へ微笑む
すると・・・妙に皆の焦った表情が目に映る
「後ろだっ!!!!!」
「・・・え?」
◇
◇
「ふーーーーー・・・ふーーーーーーー・・・」
我は右腕に滴る血液の感触を感じながらも屈辱でどうにかなりそうな自我と戦っていた
我が接近戦でアレに競り負ける
アレが我と同格である【魔王】となる
我が一瞬ではあるが・・・意識を刈り取られる
我がアレ相手に騙し討ちにも等しい奇襲を行う・・・
それが我には容認し難く、許容し難い
「せめて・・・貴様の死で以って我に償え。」
「・・・あ・・・あ・・・」
完全なる致命傷を与え、コレは微かに痙攣する
このまま放って置けば勝手に死ぬだろう
「こちらの負けだっ!!!さっさと離れろっ!!!」
【魔神】がそう言って敗北を宣言してくる
だが・・・このままでは我の屈辱は晴れない
我は腕を引き抜き、愚娘を足蹴にする
「はぁ・・・はぁ・・・我の勝ちだ・・・我の・・・」
「止めろっ!!!」
「五月蠅いっ!!!【魔神】が我に指図するなっ!!!!我の受けた屈辱はこの程度では無いわっ!!!」
そう言って足蹴にする事を止めない
当然だ
この愚娘はそれ程の事を行ったのだ
この世にあるどんな罪よりも重い罪を犯したのだ
「・・・っち!!!」
どうやら【魔神】がこちらに乗り込んでくるつもりらしい
この愚娘は間違い無く逝くだろうが・・・大人しく相手に引き渡すのも面白くない
【魔神】が此処に辿り着く直前に息の根を止めてやろう・・・
そう思い至り、愚娘の頭に目掛けて渾身の拳を振り下ろす
「ルーシャァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
悲痛な声が心地良い
そのまま絶望の辛苦を味わうが良いっ!!!
「・・・止めろ。」
強烈な殺気を一身に受け、思わず身体が硬直する
我の身体が動かない事を確認すると、声の主はコチラに近づいて来る
ーーカツンーー
ーーーカツンーーー
場の空気が凍ったかの様に静寂に包まれ・・・そのモノが鳴らす靴の音だけが響く
「・・・あ・・・あぁぁぁ・・・」
「・・・え?」
不意に【狂炎】と【魔神】が何か言葉を発するが、言葉にならない様だった
ーーカツンーー
そしてその男は・・・気が付けば不敬にも我の眼前で恐れを抱くでも無く、何の感情も表わさずに立ちはだかる
「貴様、何者だ?幾ら手負いとは言え、人族如きに舐められる謂れはないぞ。」
「・・・【魔神】殿、少女を早くに連れて行きなさい。」
「・・・・・・は?」
更に眼前の我を・・・まるで居ないかの様に他者に話しかけていく
我の思考は一瞬真っ白となり・・・そして憤怒で赤黒い感情に支配される
この脆弱な人族は・・・我を・・・無視した?
「不敬不敬不敬不敬不敬っ!!!!愚かなり人族よ!!!!」
「・・・弱き獣人よ。次の立ち合いは始まっていない・・・暫し待つが良い。」
我の拳撃を不敬にも回避し、一気に距離を詰めて静かにそう呟く
そして、愚娘を担ぐ【魔神】と共にこの場を静かに降り立った
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