クロノと総意の即位
発動させた真黒の球体が横一文字に割れていく
その刹那割れた部分から数十の黒い触手が飛び出て相手に襲い掛かる
「ひっ!!!」
「なんだこの触手?!!」
「き、斬れないぞ!!!!」
触手は敵だけではなく馬や地面の部分もまとめて捕縛し球体の中へ吸い込んでいく
「なっ!!」
「た、助けて!!!」
「あ、兄貴!!!」
ギュウンギュウンと無機質に球体へ吸い込まれていく音が鳴り響く
「し、死にたぐねぇ!!!」
「ごごっめ!!」
「うぁぁぁ!!」
僕の最強スキルである暴喰ノ口は対多人数には非常に効率が良いスキルだ
敵単体の時でも使用は出来るが、単体相手に無数の触手で攻撃する訳ではなく飽くまで1体に対して1本の触手でしか襲う事は出来ない
ただ、1つだけ気になる事があった
(暴食ノ口を使用した魔力量が思ったより減っていない…)
当然悪い事ではないのだが…ブロウドさん相手に使用した時の消耗力は激しかった
「お…お前は、い、一体…」
そんな事を思案していると、この集団のリーダーだけが残った
彼だけは狙いを定めなかったのでそれ自体は問題無い
こいつらの背後には誰がいるのか確認しなければならない
問題なのは虚ろな目で涎を垂らして半笑いの様な表情をしている事だ
精神が壊れてしまうと尋問の意味がないからな…
「拘束せよ。」
暴喰ノ口を解除し獣人たちの方へ視線を向けてそう告げると暫し茫然としていた獣人の男たちは我に返り人族を拘束した
「其等の脅威は、振り払った…」
そう告げて獣人たちの元へ向かっていったんだが…何故か全員が跪いて頭を下げてくる
いや、襲撃を救ったんだから感謝されるのは分かる
でも…獣人の男や老人、女果ては子供まで全員に跪かれると…
「頭を、垂れずとも、良い。」
口調は厳かだが、僕の動きは挙動不審だろうな
「「「はいっ!!!」」」
そう言って頭だけ上げてくる…
跪かれるのが1番居心地が悪いなぁ
「各々、楽にせよ。」
「「「はいっ!!!」」」
……跪かないでくださいと言ったら、楽にせよと変換された
その結果、跪つかれたまま何も変わっていないのは仮面の弊害だなぁと辟易してしまう
仮面を外す事も考えたが…人族に襲われたばかりの彼らに魔族とは言え人族の容姿をしている僕の顔を見せるのも気が引けるし、要らぬ誤解を与えてしまうかもしれないという理由で断念した
「【魔王】クロノ=エンドロール様…お願いが御座います。」
色々思考している僕に対してルーシャが唐突に話しかけてくる
……跪いたままで
「聞こう。」
そう言うと僕の顔をしっかりと見てくる
「御身はどこの国にも属していない孤高の【魔王】様である事はお教え賜りました。そこにご理由やご信念が介入しているかを知る由もありません。ですが…」
彼女は一瞬躊躇った後に再度こちらをしっかりと見つめてくる
「ですが…我ら獣人の【魔王】様となって頂きたいのです。」
…
……え?
その言葉を聞いて僕は固まる
獣人の【魔王】になるという事は王様になるという事だ
人族で忌み嫌われ、出来損ないだった僕が王様になる…?
そりゃ強くはなったよ?
ブロウドさんからも並みの魔族には負けないとは言われたよ?
でも並みじゃない他国の【魔王】が相手になるという事でしょ??
…いや無理でしょ?!!!
「先魔王は暗殺され、他国の侵攻所か人族からの襲撃まである状態のこの国でクロノ様が君臨する事に対してクロノ様ご自身は有益でない事は百も承知しております。ですが私たち獣人はこのままでは他国の侵攻にて属国になり奴隷として扱われるのは目に見えて明らかです。そんな時に突然現れ、我々を救ってくれた貴方様に縋るほか無いのです。」
ルーシャの言葉に周りの獣人は誰1人として異議しない
この場での総意という事なんだろうな…
「…この村でのみ、君臨する【魔王】を、決する訳には、いくまい。」
「確かにここの村人のみで決める訳にはいきません。ですが、」
そう言いながらこちらを見ながら微笑んでくる
「先魔王の娘である私と共に首都へ出向けば、問題無く【魔王】に即位されます。」
そう言った彼女は本当にいい笑顔だった…
いつも有難う御座います
クロノさん魔王になる?!(立場的に)
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