クロノの同情と同調
「愚娘が何を悟ったかの様な事を・・・」
父であり父ではない外道が何かを吠えて来る
けれどもその言葉は私の殺意を僅かでも揺らす事は無かった
「このっ!!!愚か者があぁぁぁぁぁ!!」
私が少しも表情を変えない事に苛立ちを募らせたのか、直情的に攻撃を仕掛けて来る
どんなに素早い攻撃でも、仕掛けてくるタイミングが理解出来れば回避する事は容易い
「なっ?!!」
私はそのタイミングを見切って攻撃される場所から少し離れれば、相手の隙を突く事は出来る
懐に忍ばせていた短刀を出し、腹部を斬り裂く
「ぐぬっ!!」
斬り裂くこと自体は可能ではあったが流石は【魔王】、薄皮と僅かながらの肉を斬っただけで致命傷には至らせていない
「このっ・・・愚娘がぁ!!!」
より直情的な攻撃は私でも回避できるほど容易だ
【魔王】が致命的ではないからこそ、より直情的な攻撃を繰り返す
私はそれを冷静に判別して僅かな回避と、僅かな攻撃を繰り返し続けた
◇
◇
「・・・凄い。」
目の前の光景に思わず感嘆の声を発してしまう
【豪商】であるルーシャと【魔王】であるサンドラ・・・ブロウドさんが何と言おうと一方的に終わってしまうと僕は考えていた
だから内心、いつでも止める準備をしていたのだが・・・
「【狂滅ノ道化】、いや【魔王】と対等に戦っている・・・。」
僕の目から見てもサンドラというルーシャの父は決して弱くない
攻撃力は超一級でダンキと同等だと位置付けても良い位だ
「主、驚かれましたか?」
驚愕している僕の横にダンキとファーニャが近づいて来る
その顔は余裕ある表情であり、この様になるのが当然だと思っている様に見える
「うん・・・ルーシャは本当に強くなったんだね。」
「まぁ、【宰相】殿は血反吐を吐きながらも自ら【真祖】の鍛錬を望みましたからね。」
「えぇ、ルーシャさんの気概には私たちも圧倒されました。」
うんうんと2人は頷き合う
【魔王】である2人からそんな風に思われるとは・・・一体彼女はどれ位の無茶をしたのだろう?
「・・・因みにどんな無茶をしたの?」
「そうですね・・・お母様からの初級魔法の連撃を1時間回避し続ける訓練をしていましたよ。」
「俺はブロウド殿と組み手をしていたのを見たぞ。まぁブロウド殿は手を抜いていただろうが・・・倒されても倒されても半日ほどぶっ続けにやっているのを見るとなぁ・・・」
「・・・本当に大変だったんだね。」
2人の話を聞くと他にも色々とやられているみたいだ
ファスミーヤさんの魔法は初級とは言え、一般的には超級に近い威力を誇る
それを絶え間なく1時間も回避させられる・・・
ブロウドさんとの組手は僕も経験があるが、あれも半日付き合う【豪商】は居ないだろう・・・
「ですが我が主、それのお陰で【宰相】殿は強くなりましたぞ!!」
「そうねぇ、私達も彼女相手では負ける事はないでしょうけれど余裕とも言えませんね。」
「・・・?ブロウドさんもルーシャがあの場に居るメンバーの中で中上位の実力があると言っていたけれど・・・?」
「えぇ、それは事実です。今回派遣されたメンバーの中では上位とは言えませんが・・・彼女は強いですよ。」
「だな。なんせまだ隠し玉も使っていないみたいだからな。」
隠し玉・・・?
目の前で【魔王】を手数で翻弄している光景を目のあたりにしながらこれ以上の隠し玉があるのか?と素直に驚いてしまう
「あっ!!また先程の咆哮をしようするみたいですよっ!!」
ファーニャの言う通り、痺れを切らした【狂滅ノ道化】が先程と同じ態勢に移行して全方位への攻撃を繰り出そうとしている
「・・・危ないっ!!!」
僕がそう叫ぶと同時にスキルが発動され、全方位に衝撃波が乱れ飛ぶ
「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!」
・・・だが、スキル発動直後に聞こえてきたのは【狂滅ノ道化】の叫び声だった
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