ルーシャの挑発と触発
「お久しぶりです、父様。」
そう答えた私の口調には親愛の感情は少しも乗っていない事を自覚している
だが・・・それも仕方ないだろう
アンギスに出兵した者によれば目の前の父だったモノにバルデインは殺され、私ばかりか・・・獣人族の国民や敬愛するクロノ様すら復讐対象だと豪語している愚か者だ
私としては最早親子の情を欠片も感じる事はない
「ほう・・・仮面越しでも我を理解出来る程度には成長したか。何処までも愚図で弱かった貴様にしては大した進歩ではないか。」
そう言いながら仮面をゆっくりと外す
「っ!!・・・その顔は?!」
仮面をとったその顔は父の面影を残しているものの、以前には無かった痣であったり、異なった皮膚の色が縫い付けられたかの様な顔をしている
父のそんな顔を突然見せつけられて叫ばなかった自分を褒めてやりたい
だが・・・当の本人はそう考えてはいない様で憤怒の表情を浮かべながら口を開く
「これはな・・・再び生き返ったが故の代償よ。誇り高い我が生き返る為に必要だった・・・この醜い顔がなぁーーーーーー!!!!」
「・・・・・・」
そう言って1人で激昂する父を俯瞰的に見つめながら思考する
そもそも死んだ魔族が生き返るなんて事実は聞いた事も無い
というよりも魔族を癒す魔法すら存在しないこの世界で、一足も二足も飛んだ神業が実現する筈もない
まぁ厳密に言えば異常な自然治癒や、クロノ様のスキルの様な例外的な術も無い訳では無いが本来ならば有り得ない事象だ
詰まり・・・
「貴方は・・・父様の偽物ですか?」
クロノ様の偽物が目の前に居る以上、それが現実的且つ可能性が高いとも言える
そんな私の予想を聞き、父様らしきものはピタっと動きを止める
「・・・なんだと?」
「いえ、私達魔族は癒す魔法すら殆ど存在しない種族であるにも拘らず生き返ったという大言壮語を吐かれるので偽物かと。」
「・・・クックックッ、我を偽物扱いするとは肝も据わった様だ。・・・だが。」
そう言った瞬間、一気に魔力を膨張させて戦闘態勢に移行する
「たかだか【豪商】の称号しか得られなかった王族の出来損ないが・・・我を偽物扱いするのは些か跳ね返りすぎではないか?」
「・・・・・・」
確かにこの魔力の質には覚えが・・・ある
魔力と面影を投影するに、父様で間違い無いのだろう
(どうやって・・・いえ、そんな事よりもこの父、野獣の様な暴王に対抗する手段を講じなければ・・・)
彼が本当に父であれば私の勝率は高くはない・・・
実践経験も嗜虐性も攻撃力も素早さも相手の方が確実に上だ
私が出来る事は・・・恐らく一瞬の隙を突いての攻撃でしかない
「【豪商】が【魔王】に戦闘で勝てる通りなど皆無だ。・・・敗北を認めろとは決して言わんぞ?我は愚かなお前を殺したくて生き返って来たのだからな。」
「・・・父様、仰りたい事はそれだけでしょうか?」
「・・・なんだと?」
私の反応が予想とは異なっていたのだろうか?
面白くなさそうな表情を浮かべながら、それでいて殺気を一切隠そうとしていない
「・・・私の臣民を無残に殺害し、私の大事な国民の虐殺を試み、私の敬愛する【魔神】様の殺害を予告した愚かな貴方が仰りたい事はそれだけでしょうか?と申しているのです。」
「貴様ぁ・・・」
私が目を背けず言い切ると、より苛立ちが募った表情で睨みつける
「・・・良いだろう。我が娘という事でせめて楽に殺してやろうと思っていたが・・・愚か者には相応しい最期にしてやろう。」
「可哀想ですが、また居るべき場所に送り届けて差し上げましょう。それが娘としての唯一の親孝行です。」
そう言うとどちらが言う訳でも無く親子喧嘩が始まった
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