【間章】~~追憶Ⅸ~~
「アブねぇ・・・マジでギリギリだった・・・。」
梯子を上り、一気に駆け抜けた先で尻餅をつきながらそう呟く
あの黒いナニカはどうやら地下道から這い上がってくる気は無いらしく、地上では浸食は始まっていない
「しかし・・・地下で収容されていた奴等は、あの黒いもんに取り込まれたのかねぇ・・・」
思う所が無い訳では無いが・・・助けを求めず壊れた奴等を助ける余力は無かった
もしアイツ等を助ける様に動いていたら俺たち全員生き残ってはいないかっただろう・・・
「・・・それにお前もな。」
そう言ってすぐ横で呆然とした表情を浮かべるガキに声を掛ける
ガキは俺の声が聞こえていないかの様に、地下道への穴を凝視している
まぁガキはガキなりに思う事はあるのだろうとは思うのだが・・・
ーーゴツンーー
「?!!」
呆然とした表情のまま固まっているガキの頭に軽く拳を落とす
「こらガキ、俺が声を掛けてやったんだから無視はするなよ。」
「・・・え?・・・あ・・・ごめん・・・なさい。」
「・・・へぇ、年の割にしっかりと受け答え出来るじゃねぇか。」
「・・・ごめんな・・・さい。」
いやいやいや・・・褒めてんのに何で謝るんだ?と思いながら言葉を続ける
「お前、名前は?」
「な・・・まえ・・・無いです。ごめんなさい・・・。」
「んじゃ年齢は?」
「分からないです・・・ごめんなさい。」
いやいや・・・このガキはどんだけ自分に自信が無いんだ?
名前が無かろうが、年齢が分からなかろうが、それを責め立てる気はサラサラない
というより、あんだけの特殊な状況下の中でまともに受け答えしてりゃ大したものだと思う
そんな俺の気持ちを知る由もなく、本人は酷く落ち込んでいる様に見える
「お前はどうして牢屋に入ってたんだ?同じ黒髪黒目のガキは自由に動いていたぞ?」
「あ・・・その・・・僕が出来損ないだから・・・です、ごめんなさい。」
「出来損ない?」
「はい・・・僕は身体能力も魔力も人族と殆ど変わらないそうです。理論的に考えれば突出したナニカを持っているそうなのですが・・・。」
あぁ、そう言えばあのイカレが言っていたなと思い出す
人族と魔族を交配させても全員が全員、自分の様になる訳では無いと
極端に優れた黒髪黒目も居ればその逆も居るって事だろう
そう思い至り、マジマジとそのガキを見つめる
この世界では黒髪黒目は間違いなく【不吉の象徴】だ・・・
だがこのガキそのものを見れば、多少気弱そうではあるものの、素直な性格をしており温厚であり決して悪人ではない
このまま「じゃあな。」と言って別れると間違いなく何処かで死んじまうだろう
「おいガキ、お前は行く所はあるのか?」
「・・・無いです、あそこから出た事は有りません。・・・ごめんなさい。」
まぁそりゃ当然だろうなと一人で納得する
そうでなけりゃあんな場所で牢に入れられてないだろう
「・・・よしっ!!じゃあお前は俺の家に連れて行ってやるっ!!家には俺とは別に娘が居るからな、2人ならば寂しくないだろう?」
「・・・え?」
何を言われているのか理解出来ないと言う様な表情を浮かべる
その気持ちも分からないでもないが・・・
「お前は俺と娘と家族になるんだっ!!いつまでも家に居て良いからな!!」
「あの・・・どうし・・・て?」
心底分からないという表情を浮かべる
俺だって本来ならそこまでお人好しって訳じゃねぇ
だが・・・
「どうおしても何も・・・俺はお前を助けたんだ。助けた奴は、それだけじゃあ駄目だって事だ。あとな、なんでもかんでも謝るのは止めろよ?別に謝る事を求めてるんじゃねぇんだ。」
ガラにも無く、羞恥で少しばかり早口になったがまぁ良いだろう
そんな俺の表情をマジマジと見て、ガキはフッとほんの少し微笑んだ
「ごめ・・・ありがとう・・・ございま・・・す。」
・・・そんな一言を添えて
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