アカノの困惑と混濁
「おいおいおい・・・マジか。」
「・・・・・・あの方は・・・何者ですか?」
目の前で行われた光景を見て各々がそう唸る
そして私も・・・安堵すると同時に、背筋に冷たいものが流れる
先程の魔法は・・・【真祖】が使用した禁呪の筈だ
【真祖】程の威力は無かったとはいえ・・・私が放った複数のスキルを一斉に凍らせる事は決して容易ではない
(彼女は・・・彼女達は・・・以前より圧倒的に強くなっている)
恐らく一対一で戦ったとしても私が勝つだろう
けれど・・・必ず勝つとは言えない・・・
それ程に異常な成長速度を得る事など人族の身では不可能な筈だ
そう考えていると同時に上空から強力な魔力を放出を感じて視線を上にあげる
「ん~~~・・・・【龍ノ咆哮】っっ!!!!」
ーーードゴオオォォオォォォォォーーー
そこにはベベと『心技一体』を行っているのであろうカラミトルが、上空から強力な魔法弾を此方に叩きつけて来る
「くっ・・・【神ノ盾】っ!!!」
いつの間にか【狂信】の神ノ盾は消えており、再度上空に向かって発動させて間一髪だが彼女のスキルを弾く
「むぅ~・・・全然当たらないよぉ~~。」
不貞腐れた様な言い方で愚痴りながらカラミトルはロザンワの横に降り立つ
「・・・【狂炎】様、あの方々は【勇者】・・・それで間違いありませんか?」
「・・・えぇ、少なくとも私が知る2人は【勇者】で間違いありません。」
「・・・明らかに通常の人族では無い力を備えております。」
更に警戒心を上げる【狂信】に対し、【狂戒】は臨戦態勢を構えながらも声を掛ける
「でだ・・・相手が強いって事は分かったが・・・手を引くか?」
彼のその言葉に首を横に振りながら【狂信】は言葉を続ける
「いいえ・・・幸いこちらは3名に対し、あちらは2名です。【狂炎】様と【狂戒】様にお2人の相手をして頂き、その隙に私が王城をどうにかします。」
「・・・お前さんは戦わないのか?」
「えぇ。私のご加護は結界や守備専門であり・・・攻撃には向きませんので。その代わり、あの王城は私の方でどうにかしてみます。」
彼女の言葉を聞いて私のゴーガンは互いに頷き合う
彼女が結界や守備専門なのは仕方ないし・・・私自身が王城に攻撃を加えないで良いのならば、私自身としては是非もない
・・・それが卑怯者の心理だと罵られても、その方が気が楽だ
私と【狂戒】はロザンワとカラミトルの方へ近づく
「・・・最近出会ったばかりだと言うのに・・・随分久しぶりな気がするわ。」
「・・・えぇそうですね。アカノ様もお変わりなく。」
私が口を開くとロザンワが辛らつな言葉で返答してくる
そしてその目には・・・私を倒すと言う確固たる意志を感じた
「よぉ嬢ちゃん・・・俺と遊ぶか?」
「えぇ~~・・・?おじちゃん弱そうだけど・・・大丈夫?」
「よ、よわっ?!馬鹿っ!!これでも俺ぁ名の知れた冒険家だったんだぞ!!」
一方、【狂戒】とカラミトルは気心が知れたかの様な言葉を躱しながら戦闘態勢に移行していく
それを感じながら、私も目の前のロザンワに向けて殺気を伴いながら戦闘態勢へと移行していく
「・・・・・・。」
だが彼女は先程に禁呪を使用した疲労は窺えるものの、私の殺気に蹴落とされる様な様子もなく対峙してくる
(・・・本当にどうなっているんだろうな。)
以前の彼女であれば、私の殺気に蹴落とされて身体は膠着していておかしくない
にも拘らず、今の彼女は特に気負う様な様子がない
それ自体が僅か2ヶ月も経過していない筈なのに、劇的な変化を感じるのも致し方無いだろう
「・・・どちらにせよ、戦うしかない・・・かっ!!!」
そう叫びながら、一気にロザンワとの距離を詰める
【勇者】であるとは言え、魔法が得意な彼女に対して距離を開ける事がメリットがない
そうして、私達と彼女達との戦いは始まった
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