【間章】~~追憶Ⅶ~~
「ここで愚かな貴方方に問題ですぅ・・・」
そう言ったどう見ても俺たちよりも弱そうな男を目の前に何故か恐怖の感情が渦巻く
明らかに戦闘職の体つきでは無い
魔力も其処まで高くは感じられない
なのに・・・震えが止まらない
必死に叫び出したい感情を押し殺している俺を他所に漢は余裕のある表情で言葉を続ける
「先程に・・・そちらの方が仰っていた、『黒髪黒目は不吉の象徴』・・・何故その様に言われたのか・・・ご存知ですかぁ?」
「・・・・・・。」
こいつが言葉を放つたびに・・・鼓動が激しくなり、震えが止まらない
そんな状態で思考が定まる筈もなく・・・誰も口を開かなかった
いや・・・開けなかった
「まぁ、貴方方に分かる訳が無いとは思っていましたよぉ・・・。正解は・・・昔、『黒髪黒目が人族領を蹂躙した』からですぅ。」
「・・・人族領を蹂躙ってか?・・・生憎そんな話は聞いた事は・・・無ぇなぁ・・・。それに・・・さっきのガキも強くはあったが・・・人族領を蹂躙するって程じゃ無かったぜ?」
「まぁねぇ、坊や程度の長さしか生きていないのであればそうなるでしょうねぇ。それに黒髪黒目の全てが私の様な存在に成り得る訳が無いでしょう?」
「・・・私?」
目の前の男の言葉を見過ごす事が出来なかったかの様にリングランが反芻する
そしてその言葉を聞いてニチャァァと気味の悪い笑顔を浮かべる
「そう、黒髪黒目が不吉の象徴なのでは無く・・・『不吉の象徴が黒髪黒目』だっただけの事ですよぉ。」
そう言ったと同時に魔力を一気に解放したのだろうか?
強烈なプレッシャーが辺りを包み込む
・・・今まで魔族と出くわした事も有る
・・・龍と相対した事も有る
・・・ダンジョンで強力な魔物と対峙した事も有る
けれど・・・目の前に存在しているソレは最早そのどれをも超越した様なプレッシャーを与えて来ていた
「お前は・・・何もんだ・・・?」
俺は今にも挫けそうな気持ちを奮い立たせてそう問いかける
だがコイツは薄ら嗤いを浮かべるだけで何も語らない
「このっ・・・魔族野郎があぁぁぁーーーーーー!!!!」
膝が笑っている状態である事も忘れたかの様に猪突猛進で斬りかかる
「なっ?!!」
自分が握りしめた柄を見つめて一気に距離をとる
「何を、したんだ?」
・・・俺は間違いなく剣で斬りつけた
にも拘らず俺が手に握っているのは柄だけとなっており・・・刃の部分が消滅している
剣が剣でなくなる気持ち悪さと、コイツの存在が恐怖心を煽って吐きそうになる
「何をした、ですかぁ?何も・・・なぁ~んにもしていませんよぉ?貴方が襲い掛かって来て貴方の剣が消えて貴方が距離をとった・・・ただそれだけですよぉ。」
「ファイアランスッッ!!!」
突如リングランは複数の炎を相手に目掛けて撃ちだしていく
だが・・・その炎すら、相手に当たる直前に消滅していった
「・・・攻撃が・・・効かない?」
「いえいえいえぇ~・・・攻撃が効いていない訳では無く、攻撃が当たっていないのですよぉ?」
リングランが呆然と呟いたその言葉に、目の前の男はお道化た表情で首を振る
まるで大人が子供をあやしつけるかの様なその仕草に腹を立てる前に・・・否応なく実感させられてしまう
実力が違い過ぎる・・・と
「お前は・・・何者だ?」
意図せず震えた声でそう呟く
遥か昔、それも俺たちが知らずに言い伝えだけが残っている様な『不吉の象徴』・・・
それを名乗る目の前の不気味な男が何者なのか・・・
欲求では無く、興味では無く、単純に疑問に思ってしまったのだろう
この・・・神の如き実力を携えているであろうモノは何者なのか、と
そんな俺の疑問に相も変わらず気持ち悪い笑みを浮かべながら口を開く
「そうですねぇ・・・昔に投げつけられた言葉を文字り、『サイクス』と名乗っていますぅ。」と・・・
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