クロノと既定の否定
「じゃあ次・・・【棺の誘い手】サラエラ。」
「はい、我が盟主・・・。」
サラエラはそう言って静かに立ち上がる
正直、彼女の名を告げる事には抵抗がある
素早さや力は通常の魔族よりは多少あるものの・・・身体能力では【狂笑道化団】の団員に勝てる要素はない
それでも彼女が名を連ねたのは【啞日凶棺】というスキルを持つ為だ
このスキルを発動させることにより彼女自身も身動きが取れなくなるというデメリットを抱えつつも、どの程度相手に効果があるのかが分かっていない
聞いた所によると耐魔力が強ければ弾かれるらしいのでの切り札には成り得ないか・・・
そう考えながら最後の1人を口にする
正直、不安でしかないが・・・
「天使族よん「クロノ様。」」
僕が名を放つのを直前で遮られた
声のした方へ視線を向けると・・・僕にとっては意外な人物が声を遮った事に驚きを隠せない
「・・・ルーシャ?」
「クロノ様・・・不敬である事は十全に承知しております。ですがその末席には私の名を連れねて下さい。」
その言葉に再度驚いてしまう
彼女は称号【豪商】であり、決して戦闘職では無い
確かにブロウドさんに鍛えて貰い強く放っているだろうが・・・【魔王】や【剣神】に挑むのは無謀であるとしか考えようがない
例え【宰相】という立場を考慮したとしたとしても、兵を率いて指示する事が役割なのであって、決して自分で戦う事が役割ではない
「ルーシャ・・・残酷な事を言う様だけれど、君はこの戦いには向いていないよ。」
彼女のカリスマ性や頭脳を高く評価している僕としては単身で戦う事になるであろうこの戦いに許可する事は出来ない
けれど珍しい事に彼女は首を横に振り、口を開く
「私はこの戦いには行きます。いえ・・・行かねばなりません。【真祖】様に鍛えて頂いた今だからこそ・・・行かなければならないのです。」
彼女の初めての反論に動揺してしまう
確かに彼女の気持ちを慮れば理解出来ない訳では無い
自分の腹心であるバルデインを殺された
間接的にとはいえグーガもそうだし、今までの戦いで獣人たちは何十人も亡くなっている
そして【狂笑道化団】の団員の中には自分の父が居る可能性が高い・・・
そう考えれば理解は出来る
けれども犬死する事を考えれば連れて行く訳にはいかない
「良いじゃないか・・・彼女は相応しいと思うよ。」
「・・・ブロウドさん?」
僕がどの様に断ろうか思案しているにも拘らず、ブロウドさんはそう言って彼女を受け入れようとする
どう考えても僕は彼女が【狂笑道化団】の誰かに勝てるというイメージが湧かない
にも拘らず、ブロウドさんがそれに賛成する事に違和感を感じる
「クロノ君、彼女は強いよ?誰を指名しようとしたのかは知らないけれど・・・この場に居るメンバーの中でも中上位に入るくらいには、ね。」
「?!!」
この場に居るメンバーは文官の重臣を除けばかなりの実力者が幹部として出席している
その中でも中上位に入るという彼の発言を真に受け入れる事が出来ない
「・・・ブロウドさんがルーシャを鍛えて強くした事は理解してます。でも・・・流石に奴等に対抗出来る程ではないのでは?」
「フフッ・・・クロノ君、対抗という言葉で言うのならば彼女は充分に対抗できるよ。というよりも彼女はその場に居るに相応しいと言っておこうかな?」
そう言ったブロウドさんの目に嘘は感じられない
そしてルーシャからも強い決意が感じられる
それこそ僕が拒否したとしても単身で乗り込んできそうな位の強い決意を、だ
「・・・はぁ、負けたよ。」
そう言って僕は【宰相】ルーシャをメンバーに入れる事とした・・・
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