クロノの動揺と信用
「・・・はい?」
意味が分からないという様な表情を浮かべるサイクスに対して僕は再度返答する
「折角だけど断るよと言ったんだ。」
「・・・何故ですぅ?」
当り前の回答を伝えたにも拘らず尚も食い下がって来る
そうなって来ると僕、若しくは僕等を此処に留まらせたくない理由があると考えてしまう
「いや、どう考えても罠だろう?敵対勢力にどうぞと言われて分かったと言う訳が無いじゃないか。」
「・・・成程ぉ。」
初めて気づいたと言う様な空々しいリアクションをしてくる
大方僕等が向かった隙に遊撃隊の様な部隊にクロノスを奇襲させるか、僕等を纏めて殺す様な策を施していると考える方が自然だ
ましてや今まで尻尾を見せずに人族領数ヵ国と【魔王同盟】を裏で操っていた奴等が思い付かない訳が無い
「罠を疑うのは当然ですねぇ~、だ・け・ど、貴方方には必ず来て頂きますよぉ?」
そう言ってニヤリと口角を上げて挑発するかの様な表情を浮かべる
そして僕等が何かを言おうと口を開く直前に牽制するかの様に鋭い一言を投げかける
「【狂炎ノ道化】アカノ=エンドロールも待ちわびておりますよぉ?」
「っ!!」
奴がそう言った瞬間、動揺する僕を見て場の空気も乱れる
確かに姉さんに逢いたい・・・逢って正気に戻したい・・・けれど・・・僕は姉さんに拒否されて、魔族領の皆を選択した
そんな僕が・・・
「因みにぃ~【狂楽ノ道化】ロキフェルさんもいらっしゃいますねぇ~。」
「!!!」
畳みかける様にロキフェルの名を出され、今度はマリトナが動揺する
彼女からすれば自分の主人であり、止めなければならない相手だ
動揺してしまうのも仕方ないだろう
「さらにぃ~・・・【狂滅ノ道化】サンドラ氏も待っておりますよぉ?」
「!!う・・・嘘ですっ!!父は死んだはずですっ!!!」
ルーシャもその名を聞いただけで動揺しながらも怯える様な表情を浮かべる
その表情を見て意味をくみ取ったのか、サイクスは更に饒舌に語る
「本当ですよぉ~・・・貴女とぉ元国民に深ぁぁい恨みを抱いてお待ちしているみたいですねぇ?」
「「「・・・・・・」」」
多少なりとも因縁のある相手の名を呼ばれ、全員が困惑する
この提案を飲まないのは簡単だ・・・ただ単に断れば良い
だが・・・
「もし・・・それでも招待を断れば?」
「さぁ?私も良くは存じ上げませんがぁ・・・その際は無作為に適当に襲いたい所を好きな様に襲うだけですかねぇ~??」
・・・まぁそうなるだろうな
こちらは守る必要べき存在が居る
相手は自分自身も含めてそんな存在は居ないに等しいだろう
目的も秩序も無く動かれて困るのは圧倒的にこちら側だ
「お前たちの招待に応じるとして・・・お前たちが僕等が居ない間に魔族領や人族領を襲わないとは言えない。」
「まぁそれはそうでしょうねぇ~。」
「それに対する保険や保証はあるのか?」
「保証・・・?キッ、キキキキキ・・・ヒャハハハハハッ!!!」
そう尋ねると気味の悪い声で笑い出す
その笑い声を聞いていると・・・僕はそこまで滑稽な事でも言ったのだろうか?という気持ちになる
「・・・何か可笑しい事でも言ったかな?」
「いえいえいえ・・・クククッ・・・そうですよねぇ。貴方方からすれば当然そうなりますよねぇ?今回貴方方をご招待する理由ですが・・・ある御方に楽しんで頂くという意図がありますぅ。」
サイクスの口から出て来る『ある御方』・・・それが一体誰であるのかは何となく想像が出来た
僕が想像した人物が正解だとでもいう様にサイクスは頷きながら言葉を続ける
「今回の催しはですねぇ~・・・その御方に楽しんで頂く為に開催致しますので他の事にかまけている暇はないんですよぉ~。私たちは全ての人員を結集し、その御方に喜んで頂く為だけにこの催しを開催しますからねぇ・・・他の有象無象は貴方方がこの世から去った後でゆっくり掃除してもいいんですよぉ。」
そう言って相変わらず不快な表情を浮かべながらサイクスは返答してきた
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