ブロウドの失敗と失態
「貴方様は・・・私は、私たちはもう必要ないと仰るのですか?」
「・・・そうだね。」
此処で優しさを見せる訳にはいかない
中途半端な優しさ程、彼女にとっては猛毒にしかならない
そう思ってしっかりと言い切る
するとまた暫しの沈黙が続きます
「貴方様は・・・今でも世界の進化は諦めていないのですか?」
「・・・?」
彼女の言わんとしない事が理解出来ない
私は彼女に私の事を忘れて自分自身の為に生きて欲しいと・・・そう伝えた筈だ
それにも拘らず、何故か私の願いの話に切り替わっている
「私の神様、お答えください。貴方様は世界の進化は諦めていないのでしょうか?」
「・・・あぁ、私は初心に戻ったつもりで再度目指そうと思うよ。」
「・・・あはぁ~~。」
正直に答えた瞬間、彼女らしからぬ・・・どちらかと言えばサイクスに近い嗤い声が聞こえる
思わず頭を上げて彼女の表情を見ると・・・酷く濁った瞳で焦点を合わさずに口角を上げる
「あぁ~・・・私の神様・・・でしたら私が私が私が・・・貴方様の一助として使命を果たします。」
「いやっ、君は君の望む未来を「これが私の望む未来ですぅ・・・。」」
彼女の表情を見て絶句する
恐らく彼女の耳には・・・もう私の声は聞こえていない
いや聞こえているのかもしれないが・・・意見を聞く気は無いのだろう
「私は貴方様に必要とされて今まで生きてきました・・・。貴方様の感情を取り戻す事が出来ない屑で醜悪で愚かで脆弱で無能な私ですがぁ・・・貴方様の願い、進化だけは・・・進化だけはぁ私の手で土台を作ってご覧に入れますぅ~~!!!!フフ・・・フフフフフフフフ・・・」
「・・・・・・」
そんな彼女に対して私は何も言えない
いや、何かを言う資格も権利も無いのだろう・・・
出来る事と言えば、ただ黙って壊れていっている彼女を見つめる事しかない
「あの無能が・・・あの無能が貴方様の一助になるなら・・・私たちならもっと出来ます。世界を壊して、あの無能を壊しせば・・・私の神様は私の神様のまま・・・フフフフフフフフ・・・。」
「・・・クロノ君は私に勝ったんだ、それは事実だよ。・・・君じゃあ彼には勝てない。」
私は冷静に事実を告げる
少しは動揺してくれればという意図があったのだが・・・残念ながら彼女は嗤ったままだ
「ご安心ください、私の神様。私があの無能を殺せば・・・貴方様が敗北した事実はなくなります。だって・・・貴方に勝ったという存在はいなくなるんですからぁ。」
「・・・・・・。」
「それでは私の神様・・・私はこれで。」
「待ちたまえ。」
そう言って闇に溶けて消えそうな彼女を呼び止める
振り返って私を見つめるその目は・・・やはり何処か壊れている
だからこそ、私は言わなければならない
「私はクロノ君の傍で君たちを牽制するよ。・・・君たちが行う事にも可能性がない訳では無いがね。だってそうだろう?壊れたモノが創る世界が素晴らしいモノである筈がないだろう?」
私がそう告げるとケタケタと嗤う
以前の彼女ならば私の前ではこの様な嗤い声を発する事は無かった
「私の神様・・・世界を創るのは私たちでは無く貴方様です。私たちは貴方様の願いが成就されると同時に消えましょう・・・。」
そう言い残すと闇に溶けて消えていった
そして私は1人立ち尽くしてしまう
彼女が壊れたのは間違い無く私の所為だ
私を崇め、敬愛し、純然たる使命感のみで動いていた
そんな彼女に対して遠回しながらお前は用済みだと言ったも同義だ
「さて・・・困ったなぁ・・・。」
夜空の星を眺めながら思う事は後悔と苦悩・・・
私は感情が戻った事に喜びを感じながらも・・・ホンの僅かながら後悔をしながら月を見ていた
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