ブロウドの後悔の公開
「では、な。今回は引き下がってやるが・・・次はこうはいかんぞ。」
ソテルアスは去り際にそう言い放つ
何処か清々しさを感じる表情を浮かべる彼に、今までに感じた事の無い感情が湧き上がる
「ソテルアス・・・君は今、どの様な立ち位置で動いているんだい?」
だからだろう、私がこの様な言葉を彼に掛けてしまったのも・・・
けれど私の言葉に対し意に返さない様な表情を浮かべて鼻を鳴らす
「ふんっ、貴様に教えてやる様な理由は無いわ。」
「だよね。」
「だがまぁ、そうだな・・・お前の子飼いと秘蔵っ子との対立も近いだろう。それだけは・・・教えてやる。」
「・・・有難う。」
望外な言葉を投げかけられ、私自身も思わず彼に礼を言う
ソテルアスも礼を言われると思っていなかったのだろう・・・驚いた表情を浮かべている
まぁ私も思わず自分が発した言葉に驚いてしまったのだが・・・
「・・・ではな、我が再度殺しに行くまで誰にも殺されるなよ。それと・・・それをそこの小僧にも言っておけ。」
彼にしては珍しい物言いだなと思い、苦笑しながら私も頷く
その後、ソテルアスは私を見た後に翼を広げて飛び立っていった
「・・・行ったわね。」
「だねぇ・・・。」
私の傍らで呟くファスミーヤの言葉に相槌を打ちながら、ソテルアスが飛んでいった先を見つめる
誰かと何かを共有するこんな時間も悪くは無いなと思いながらボゥとしてしまう
「ねぇ、ブロウド・・・。」
するとファスミーヤは何処か遠慮したかの様な口調で私の名を呼ぶ
何か言い辛い事でもあるのだろうか?と思い視線を彼女へ向けた
「さっきは・・・助かったわ。その・・・有難う。」
そう言って照れた様な不貞腐れたかの様な表情も久しぶりに見る
そんな久しぶりに見た表情を見ると何とも言えない感情が胸に湧き上がって来る
「なぁに、どうやら私は君に嫌われている訳じゃないみたいだからね、ついでだよ。」
その感情を言葉で吐露せずに誤魔化す事が私にできる精一杯の感情だ
そんな私の気持ちを知る由も当然なく、彼女は顔を真っ赤にしながら頬を膨らませた
「・・・それではクロノ君を連れて戻ろうか。」
「えぇ、そうね。」
無理やり話題をすり替えてクロノ君に視線を移す
体格的には細身で華奢であり、青年と言える程度の、されども幼さが少し残っているかの様な出で立ちをした彼を見ると【魔神】だと信じる者は少ないだろう
「彼には色々と迷惑をかけているなぁ・・・」
「あら、自覚はあったの?」
ファスミーヤにそう言われると苦笑するしかない
思えば彼は私が変生した事により、想像すらしていなかった生を歩んでいるだろう
それでも恩を感じて常に一所懸命に取り組んでくれる
「・・・恩があるのは私の方なんだけどね。」
今なら理解できる・・・
あの時私は絶望していたのだろう・・・
進化を求めるも道筋は見えず、無為な生を歩む我が子たち
安寧という耳触りの言い言葉を盲信する親や家族
そんな現状を打開できない、する術も見つからない自分自身・・・
いつしか希望の光は見えず、けれども諦める事も出来ず・・・
そんな時に出逢ったのが彼女達だった
「彼女達へのケリは・・・私が付けるべきなんだろうな。」
彼女は純粋に私の為に動いてくれている
そこには善意も悪意も無く、ただ絶望し、感情が動かなかった私を笑わせるという目的の為に・・・
だが私はクロノ君と出逢った事で感情が動く音を知った
すると彼女は・・・私の願いである進化に拘った
『君は君で思う様に動けば良い。』
あの時そう言った自分を捻り潰してやりたい
そんな事を思いながらあの時を思い出す
クロノ君に敗れ、クロノ君と共に【黒家クロノス】へ戻る道中だったあの日の夜を・・・
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